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彼女に処女を奪ってもらう提案を…

 彼女の言葉を聞きながら、私のなかに突拍子もない想像が浮かぶ。

「あのさあ、シホさんにペニスバンドを付けてもらって、処女を奪ってもらうのってどうかなあ?」

「ああ、そうですね。時々してもらってて、今日こそは濡れてるし、いけるでしょうって、やってみるんですけど、やっぱり私が途中で痛くて、『ゴメン、やっぱ無理~』って、ハハハハ……」

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「なんだ、試そうとはしてたわけだ」

「ですね。いつもやめちゃって、フフフッ、結局はできないんですよ……」笑い声のままカオルは現状を説明する。

「ちっちゃめのバイブなら入るんですけど、ふつうの大きさのディルドだと、もう入んないんですよ」

 念のために説明しておくと、ペニスバンドはベルトをつけて男性器を象ったディルドを下腹部に装着する器具。また、ともに男性器型の大人のオモチャでも、バイブは振動するがディルドは振動しない。

 男性器の実物は経験していなくても、それを模した大人のオモチャを、“処女”のカオルは豊富に経験している。それだけではない。レズビアンもアナルセックスも彼女はすでに知っている。なんというか、“処女”という単語に反応してしまった自分がとても愚かに見える。

「会社を辞める予定なんですよね」

 そろそろ約束の1時間が経とうとしていた。私は「いや、面白かった。ありがとう」と、取材の終わりを告げた。

 謝礼の1万円を渡し、目の前で領収書を書いてもらうと、彼女はなんの躊躇もなく実家の住所と本名を記す。その無防備な姿を見ながら、この先、悪い客に出会わなければいいけど、と心の中で案じる。

「あのさあ、またしばらく時間が経ったら、同じような感じでインタビューさせてもらえないかな? これからどういう変化が起きるのか知りたいから」

「あ、全然いいですよ。また連絡してください。変化といえば、もうちょっとしたら私、会社を辞める予定なんですよね」

 さらりと口にする。

「ええっ、辞めちゃうの?どうして?」

「いやなんか、働いてみたら、全然予想と違ってたんですよ。だからもういいかなって」就職活動をしてようやく入った一部上場企業のはずだが、彼女の口調にはまったく未練や迷いが感じられない。

「次はどうするか決めてるの?」

「いや、まだなにも。でも、とりあえず貯金もあるし、そんなに焦らずに探します」

「そうなんだ。わかった。じゃあ今度はその点も含めて話を聞かせてね」

「はーい」

 なんとも拍子抜けするあっさりした態度に、私はなんだか未来の楽しみを得たような気分になった。もちろん、彼女が変節をせずに取材を受けてくれれば、という前提ではあるが、カオルがこの先、年齢と経験を重ねてどのように変わっていくのかを知ることができるのだ。それはとても贅沢なことのような気がしていた。

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