順位戦に参加できないと10年で引退に

 何より、フリークラス棋士は順位戦に参加できないと10年で引退に追い込まれてしまう(宣言棋士はそれより長い)。次点2回組にとっては、三段リーグの26歳に続く2度目の年齢制限とも言える。伊奈が昇級を決めた時の取材で「32歳で引退になるなら、26歳で奨励会退会のほうがよかった」と語ったのは今でも印象に残っている。

 伊奈以降の次点2回組も、みな所定の成績を満たしてC級2組に参加を果たした。そして今回の古賀である。9月8日の対梶浦戦については「初の決勝進出と順位戦昇級という2つが懸かる重い一番になりましたが、強敵相手にいい将棋が指せればと思っていました。対局自体も終盤まで面白い将棋で、納得がいくものでした」と振り返る。終わった瞬間は「目前の一局に勝ててホッとしたのが一番でしたね」とも。

 実は梶浦戦の前、8月31日に行われた黒田尭之五段戦も勝てば昇級の一番だったが、ここでは敗れている。

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「残念でしたが、次もあるので落ち込んでいる暇はないというのが正直な気持ちです」

 古賀は10代で四段昇段を果たしたこともあり、有望な若手の一人としてみられているが、デビュー当初はそれほど勝っていたわけではない。「年度が変わってから勝ち星が集まり始め、6~7月頃に、順調ならこのまま抜けられるかも、と思い始めました」という。

直近の目標は「叡王戦の四段予選を抜けたい」

 古賀の勝ち星が増えだした頃は、Abemaトーナメントが注目を集めていた頃でもあった。古賀は兄弟子の佐藤天彦九段からチームメイトとしてドラフトで指名されたが「注目される将棋を指せたのは大きかった」と振り返る。

 佐藤天は、次点2回のフリークラス編入権利を行使せず、のちに三段リーグで2位以内に入って四段昇段を果たしたことでも知られる。四段昇段の形は対称的となった兄弟弟子だが、偉大な兄弟子に早く追いつき、大舞台でぶつかることを師匠の中田功八段が待ち望んでいるだろう。

 新人王戦は惜しくも準優勝だったが、古賀はこれからについて「順位戦は先後が決まっているので、準備して臨みたいです。直近の目標としては叡王戦の四段予選を抜けたいですね」と語った。今年から始まった「SUNTORY 将棋オールスター 東西対抗戦2021」では、激戦を勝ち抜いて関西代表の座をつかみとった。トップ棋士に交じって注目の舞台で指すことになる。

フリークラス脱出を果たした古賀悠聖四段 ©️相崎修司

 同世代の棋士については「藤井聡太三冠は格上なので意識していませんが、伊藤匠四段、加古川青流戦で優勝した服部慎一郎四段からはいい刺激をもらっています。ライバル視しているので、負けないように活躍したいです」と闘志をあらわにした。新鋭の更なる飛躍に期待したい。

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