「狭くて深い」メディアを実現するためには?
日本でも話題になった『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか』の著者で、ニューヨーク市立大学大学院ジャーナリズム学科教授のジェフ・ジャービス氏は、「メディア企業の未来にはイノベーションが欠かせない。そのためにまず、メディアの本質を問い直す必要がある――」と語っています。
「ナラティブリー」のマネタイズ手法に見られるように、米国メディアの現況を取材して改めて気づいたのは、「メディアにとって最大の価値は『編集力』である」ということです。そしてそれは、ジャービス氏が述べた「メディアの本質を問い直す」ことにも通じるように思えます。つまり、「編集力」こそがメディアの本質の一つであり、そのスキルをあらゆる分野で最大限活用することに、未来の可能性を見出すことができるのではないかということです。
冒頭で触れたキャプラン氏の主張「狭いテーマにフォーカスし、深い読者に支持されるメディアが増えている」には実は続きがあり、「そうしたメディアが増えている一方で、既存メディアのように広いテーマを扱うメディアもあって、最近は二極化が進んでいる」と語っています。
いずれのメディアでも、継続的なマネタイズは現在直面している最も大きな課題と言えます。とくに「狭く深いメディア」は読者との関係性をどれだけ深めていくことができるかが戦略の肝であり、読者とのコミュニケーションにも「編集力」が問われてくるのだと思います。これからの時代、一方向的にコンテンツを発信するメディアはいくらでも代替され得ますが、コミュニケーションの蓄積で読者との深い関係性を築いてきたメディアはマネタイズ面でも優位に立つかもしれません。
情報に「ストーリー」という付加価値をつけ、読者に届ける(コミュニケーション)設計までを担う「編集力」は、今後あらゆる場面で必要性を増していくはずです。日本でも編集者が書籍や記事ではなく、商品やサービスをプロデュースするケースが少しずつ見られるようになりました。
本記事で取り上げた事象は、あくまで米国メディアにおけるトレンドの一端ですが、メディアが有する最大の武器は「編集力」だと認識し、「編集」という概念を再定義することが、2018年に日本のメディアでも求められていくのではないでしょうか。