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加藤勝信 厚労相
「必ずしも引き下げ自体を目的としたものではない。前回のデフレ(物価下落)を反映した引き下げとは違う」

産経ニュース 12月18日

 政府は18日、平成30年度の予算案を固めた。一般会計の総額は過去最大となる97兆7100億円程度となる。焦点となった社会保障費の分野では、生活保護費のうち、食費や光熱費などに充てる「生活扶助」について、2018年10月から3年間で国費約160億円を削減することが決まった。

 当初、厚労省は最大13%減の見直し案を提示していたが、批判が出ていることに配慮して減額幅を最大5%にとどめることを決めた。5年に一度見直している支給額は、前回初めて平均6.5%引き下げており、2回連続の減額となる。大都市部に住む母親、中学生、小学生の3人家族の場合、今の生活扶助の受給額より約1万円少ない14万円台になり、生活水準は1990年と等にまで低下する。物価が上昇し、消費税の税率が上がっていく中、生活保護世帯は消費税が3%だった頃の生活水準に逆戻りすることになる。

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参議院予算委員会で答弁する加藤勝信厚生労働相 ©時事通信社

 元生活保護ケースワーカーで社会保障論を研究する名古屋市立大学講師の桜井啓太氏は「物価が上昇し、消費税が導入されて税率が上がっていく社会で、こんなことは考えられません」と憤る。生活保護制度に詳しいライターのみわよしこ氏は「政権が総力を挙げて、生活保護世帯の子どもたちをネグレクトしようとしているのではないだろうか」と指摘している(ダイヤモンドオンライン 12月22日)。

 厚労省によると、生活保護を受けていない一般の低所得世帯の消費支出より、生活保護の支給額が多いとの調査結果を踏まえて見直したという。加藤厚労相の言葉も、あくまでバランスを重視したものだと強調している。ネットには「働いている人より、働いていない生活保護費受給者の方が多くのお金を貰っていることがそもそもおかしい」という声も多いが、政府はなぜ低いほうに合わせるのだろうか? 生活保護をめぐる議論を聞いていると、アベノミクスのおかげで好景気になっているとはとても思えない。

小野寺五典 防衛相
「今、弾道ミサイル防衛に対して、可及的速やかに緊急に対応してほしいという国民の様々な要請がある」

防衛大臣記者会見 12月19日

 生活保護に関する予算が引き下げられる一方、防衛費は膨張するばかりだ。2018年度予算案の防衛費は、過去最大の5兆1900億円に上る。小野寺防衛相が要望した新型の護衛艦2隻の建造が認められ、1055億円が計上される見通しとなった。

 防衛装備については、射程が約900キロに及ぶ長距離巡航ミサイル導入に向けた調査費用が追加要求されている。小野寺防衛相は「あくまでも日本防衛のためで敵基地攻撃を目的としたものではない」と語っているが(日本経済新聞 12月8日)、今年3月に自民党安全保障調査会が敵基地反撃能力の保有を政府に提言した際、この提言を主導したのが小野寺氏だった(日本経済新聞 3月29日)。小野寺氏念願の敵基地反撃能力の保有に向けて進んでいるんだから、ちゃんとそう言えばいいのに。なぜ軽く嘘をつくのだろう?

予算総額97兆7100億円――2018年度予算案をめぐり、閣僚折衝に臨む小野寺防衛相(左)と麻生財務相 ©共同通信社

 また、政府は19日の閣議で地上配備型のイージス・システム「イージス・アショア」の導入を正式に決定した。北朝鮮の弾道ミサイルへの対応を急いだ形だが、導入には2基合計で最低2000億円かかり、運用開始は今から5年以上先になる見込みだという(ロイター 12月19日)。5年後!? ぜんぜん「緊急に対応してほしい」という声に応えてないじゃん!

河野太郎 外相
「来年の話をすると鬼が笑うかもしれないが、来年はぜひ外相の専用機を1機……」

産経ニュース 12月18日

 生活保護費引き下げなどの緊縮財政が叫ばれる中、いきなり飛び出した「おねだり」に政権に近いとされる産経新聞が牙を剥いた。

産経新聞の“おねだり”報道に対し、「遺憾」と反論した河野外相 ©文藝春秋

 河野太郎外相は18日の自民党外交部会で、2019年度予算での外相専用機の導入に意欲を示した。河野氏は、海外で会談相手から食事に誘われても飛行機の搭乗時間を理由に断っているエピソードを理由にしており、候補機種に米ガルフストリーム社の「650ER」の名前を具体的に挙げている。出席者から三菱重工業の国産ジェット旅客機「MRJ」はどうかと問われた河野氏は難色を示したという。「650ER」の価格は6650万ドル(74億円)だ。

 河野氏は19日の会見で、産経新聞の報道に対して「揶揄するような報道は遺憾。理解をして書いているなら倫理にもとるし、理解しないで書いているなら能力に問題があると言わざるをえない」と痛烈に反論。外相専用機の導入プランについては「真剣に検討しなければならない」と改めて強調した(朝日新聞デジタル 12月19日)。生活保護と河野氏が欲しくて欲しくてたまらないプライベートジェットを同列に論じることはできないが、誰だって両者の金額を頭の中で比較するに決まってる。強い者にお金が集まり続け、弱い者にはお金がまわらないのが今の日本だ。