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「朝の時点では7番手だったので…」大混戦の三段リーグを抜け出した3人が語った“憧れの棋士”

「朝の時点では7番手だったので…」大混戦の三段リーグを抜け出した3人が語った“憧れの棋士”

第72回奨励会三段リーグ最終日レポート

2023/04/01
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柵木「1級から2級に落ちたことがあり、その時はつらかったはずですが、まったく思い出せません。それほど三段リーグがきつかったです。3期目あたりからリーグの勝ち越しは続いていましたが、昇段には絡めず、一度きたチャンスを最終局で負けて逃した(第69回リーグ)のはきつかったですね。師匠からは、いつでも大丈夫。四段に上がれる、と励ましてもらいました」

育ててきた弟子がプロになり、ホッとしている

 小山新四段の師匠は戸辺誠七段、森本新四段の師匠は小林健二九段、柵木新四段の師匠は増田裕司六段である。このうち、戸辺七段と増田六段は、自身の門下から初めてプロ棋士を輩出したことになった。

小山直希新四段

 後日、新米師匠の2人からも話を聞いた。まずは戸辺七段から。

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「小山はもともと、指導棋士の飯島篤也さんが行っている将棋教室に通っており、飯島さんから入門をお願いされたのが最初です。彼の将棋は長手数でも気持ちを切らさない根性タイプで、自分と似ていると思ったのも弟子にとった理由の一つでした。初めての時はまだアマチュア初段~二段くらいで、プロを目指すにはまだ弱いかなと思いましたが、すぐに四段クラスになりました。そういう努力も買いました」

 奨励会入りしてからも、弟子の将棋を見守ってきた。

「三段までは順調で、それでも三段になったばかりは、まだ力が足りなかったのですが、ここ数年で力をつけたと実感します。私の弟弟子である岡部を含めて研究会をやっており、この2人に四段になってほしいなと。今回の結果、師匠(加瀬純一七段)からもすぐに、よかったね、という連絡がありました」

 初めて弟子が棋士となったことで、戸辺七段にとっても感慨もひとしおだろう。

「育ててきた弟子がプロになるという、普及、後進の育成としての形あるものが一つできたのはホッとしています。小山は奨励会時代の成績を常に報告してくれて、その時その時に必要な言葉はかけたつもりです。

 三段リーグ最終日の1週間ほど前に2人で銭湯へ行き、そこで1時間くらい話しましたが、その時の表情がよかったので、四段になれると思いましたね。プロとしては自分なりのパフォーマンスを確立させて、人気のある棋士になってほしいです。AI研究と古き時代のガッツを合わせた二刀流が持ち味で、その良さを伸ばしてほしいですね」

小山直希新四段(左)の昇段の一報を受けて駆けつけた師匠の戸辺誠七段(右)

増田六段自身も三段リーグで苦労した経験が

 続いては増田六段の談話。

「柵木は愛知県出身ですが、彼が幼稚園の頃に杉本さん(昌隆八段)の代打で地元の指導対局に行ったのが最初です。子どもながら一手一手考える姿を見て、彼のお母さんには天才だと言いました。