だが、その舞台裏は、タイトロープの上で奇跡的に明菜1人が、歌声を響かせて華麗に舞っているかのような危うさを内包していた。
明菜が引き起こした“大事件”
この企画ライブは当初、夏に大阪でも開催を予定していたが、ついぞ実現することはなかった。専属バンドのファンタスティックスは、「AKINA EAST LIVE」から約2カ月後、明菜が引き起こした“事件”によって自然消滅する形で、事実上の解散の時を迎えた。
この年は、6月24日に美空ひばりがこの世を去っている。昭和の終焉を告げる悲しみの鐘が日本中に鳴り響くなか、音楽番組にとっての幸福な時間もまた、終わりを迎えようとしていた。視聴率の低迷により、あとはどこの局が最初に撤退を決めるかという“チキンレース”の様相を呈すなか、ザ・ベストテンは7月6日の放送で、9月末をもって番組が終了することを発表した。その5日後─―。
明菜は、近藤の自宅マンションの浴室で手首を切り、自殺を図った。彼女にとって唯一の救いだったはずの近藤の存在がクローズアップされ、マスコミの関心は2人の痴情の縺れに集中した。
事態の収拾に乗り出したのはジャニーズ事務所のメリー喜多川だった。明菜にとっての本当の苦悩が始まるのは、まさにこの時からだった。
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