今一度地下に何があるか探ってみよう、自分の関心を追求してみよう

――これまでの作品ではご自分で撮影も手がけられてきましたが、今回、高野さんという別の撮影監督を入れられたのは、どういうきっかけだったんでしょうか?

小田 自分で撮影をするのは楽しいんですけど、そうじゃない立ち位置で現場にいるってどういうことなのか試したかったのと、複数の他者が入ったときの現場のあり方に興味がありました。今までよりもう少し大人数のチームになったときに、映画作りってどんなふうになるのかなあって。

――そういう意味で、『Underground アンダーグラウンド』はこれまでの小田さんの映画に連なる部分を持ちながら、いろんな新しい試みをされた作品でもあるなと感じます。そもそも今回、日本の地下空間を映そうと思われたのはなぜでしょう?

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©2024 trixta

小田 過去2作で地下を撮ったことで「どうして地下にこだわるんですか?」と何度も聞かれたんです。でも私自身その答えはいつも曖昧なままだった。『セノーテ』の後、日本に帰ってきたこともあり、今一度地下に何があるか探ってみよう、自分の関心を追求してみようと考えたのが本プロジェクトのきっかけでした。

 実際に撮影してわかったのは、空間としては地下も地上もそんなに変わらないということ。ただ自分は、大きな声で語られる歴史より、小さくて聞こえづらい声やまだ発見されていない記憶みたいなものに惹かれるところがあって、そういう声は地上より地下に多く存在している。それが私が地下に惹かれてきた理由かなと、色んな地下空間を回るうちに気づきました。

――それは、3作品を撮っていく中で、徐々に気づいていったことなんでしょうか。

小田 ちゃんと考え出したのは『Underground アンダーグラウンド』を撮り始めてからだと思います。『鉱 ARAGANE』も『セノーテ』も、人からの勧めやいろんなご縁をいただいて撮った感覚があったけど、今回は自分から「地下空間を撮る」と決めて臨んだので。

©2024 trixta

――小田さんが撮る地下空間は、無機質な空間というより、どこか人の気配がするような空間ですよね。ここは違うな、ここは撮りたいな、という選択はどのように行なっていたんでしょうか?

小田 人の気配を撮るうえで、やりやすい場所とやりづらい場所はありました。実は戦争遺構の穴などでは、蝙蝠や虫がたまに出るくらいでほぼ何も動かず音もしない。アクションが何も無いんです。こういう空間でかつて誰かが生きていた気配をどう見せたらいいかと考えるうち、プロジェクションのアイディアがクルーから生まれてきたりしました。自分が以前撮った亀や魚の映像を穴の壁に投影してみたらこれは面白いなと。だから現実的な話として、どこなら投影をしやすいかな、というのは考える必要がありました。