政治の中心地、東京・霞が関から“マル秘”政界情報をくわしくお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。

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パワハラ騒動の余波

 今夏で在任2年を迎える防衛省の増田和夫事務次官(昭和63年、旧防衛庁)。交代が既定路線と見られる中、次期次官レースに影を落とすのが、昨年続いたパワハラ問題だ。

 7月の幹部人事と並行してパワハラ職員の一掃を図ったものの、昨年末には次官級ポストの防衛審議官に就いていた中嶋浩一郎氏(平成元年、同)が複数の部下に再三パワハラを行ったとして停職30日の懲戒処分に。事実上の引導を渡され、依願退職した。

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 パワハラに関する証言は7月、別の幹部3人の処分時に十分集まっていたが、増田次官が中嶋氏から「今後は部下へ適切に対応する」と確約を取り付け、昇格を認めた。蓋を開ければハラスメントによる次官級の懲戒処分という前代未聞の事態となり、他省庁からも「防衛省ならではの珍事」と失笑が漏れる。

パワハラ問題で次官級ポストまで処分を受けた防衛省 ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 後釜となったのは中嶋氏と同期の加野幸司官房長。前任者に比べれば霞むものの、部下に対する厳しい体質も囁かれる。防衛政策局長、官房長を歴任した一方、過去の防衛審議官で次官に転じた者はおらず、省内でのキャリアはここが天井となる。

 増田次官の後任として有力視されるのは大和太郎防衛政策局長(2年、同)だ。日米防衛協力や自衛隊の部隊運用に関するポストを歴任し、防衛省だけでなく、関わりの深い外務省からも「将来の次官候補」と目されてきた。ただ、ハラスメント文化が濃厚だった六本木の旧防衛庁時代の空気を吸ってきたのは、大和氏も同様。省内からは「同じ轍を踏むのは勘弁してもらいたい」と不安げな声も聞こえてくる。

 その後に続く人材には、大和氏と同期の田中利則地方協力局長や、萬浪学官房長(3年)の名前が挙がる。両氏とも「オールラウンダー」だが、直近では、沖縄防衛局の勤務が長く、国家安全保障局(NSS)出向も経験した田中氏の経歴が目を引く。《記事の続きでは、幹部自衛官のトップ人事について言及しています》

※本記事の全文(約5500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年5月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。

■連載「霞が関コンフィデンシャル」

【2024年】

6月号 令和のモーレツ官僚、脱原発の知恵袋、準キャリアのエース、サイバー新組織の陣容

7月号    官僚たちの選挙戦、「改革派」の真価、処分を克服できるか、新御用掛の安定感 

8月号 政権を去る「恐竜」、波紋を呼んだ中企庁長官、新・プリンスの実力、オールジャパンの真価

9月号 処分を逃れた「巨悪」、財務次官の系譜、女性検事総長への嘆息、長官レースの号砲        

10月号 新秘書官の本命候補、「脱・警察」となるか、「イトウ違い」の裏側、旧自治省の“復権”

11月号 新総理との距離感、原発再稼働の勝負所、少子化対策のキーマン、高専出身次官の力量 

12月号 不安漂う首相秘書官、首相肝いりの官房副長官、間合いを詰めた金融庁、相次ぐ県警不祥事

【2025年】

1月号 「壁」を巡る同期の攻防、「岸田議連」の火種、元首相秘書官に“赤紙”、1年延期の新次官

2月号 野党対策の黒子たち、官邸に漂う閉塞感、総務官邸官僚の実力、次期警察人事の行方

3月号 経産省が込める“実弾”、新次官と首相の距離、財務相を支える女性たち、インサイダーの“余波”
4月号 財務省の“切り札”、森山印の次官レース、日米会談の余波、燃え盛る厚労省
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