「西山先生は女流棋界の神様というか、私にとっては大谷翔平みたいな存在です。同じ振り飛車党としても、本当に勉強になっています。少しでも近づきたい。まだ言える立場ではないですけど、いつかは超えたいと思っています」
木村は中学2年のときに女流棋士2級でデビューした。藤井聡太が四段昇段した年齢よりも数ヶ月早く、棋士と女流棋士の制度の違いがわからない地元の人からは、「藤井さんより若くしてプロになるなんて、すごいね」と言われた。説明するのが、少し恥ずかしかった。
高校と女流棋士の両立
中学3年の冬、高校に進学するかどうかで悩んだ。将棋一本にかけたい気持ちが強かった。両親に相談すると「自分の思うようにやりなさい」と言ってくれたが、心配しているのはわかっていた。途中で休学や退学はできると思い、兄が通う私立高校に行くことに決めた。学校は女流棋士としての仕事を認めてくれて、対局や記録係の時には公休にしてくれた。
デビューしてからの2年間は順調だった。しかし、高校に入学した3年目、急に勝てなくなった。
「対局に行く朝は、気合を入れて出るのですけど、序盤から形勢を損ねてしまうことが多くなった。明らかに技術不足なのですが、中終盤の捻り合いになったときに根気も足りていない。メンタルも良いときもあれば、極端に悪いときもある。なかなか抜け出せなくて、苦しい期間が続いています」
高校から帰宅後に、毎日将棋の勉強は欠かさない。土日も研究会が入れば大阪まで行く。それ以外の休日は、一日家で将棋の勉強をしている。
「勝負の厳しさを教えられた今は、自分の勉強スタイルを変えるか、奨励会入会を考えるとか、変化を出していかないといけないと思っています」
木村の言葉には、何かを掴み取りたい渇望が滲んでいた。



