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感想戦が終了したのは0時36分
名人戦第4局終局直後のインタビューで、永瀬は「1局でも教えていただいたことは勉強になりますので。次につながることができてよかったと思います」と答えた。タイトル戦で「教えていただいた」と答えるなど普通はない。また、藤井も後日、「感想戦をしっかりやってもらえる。率直に内容や疑問をぶつけられる。意見を交換できるのはいいし、楽しいというか充実した時間と感じています」と語った。盤上で戦いながら対話をし、感想戦で将棋の真理について語り合い、将棋が強くなること、それが2人の何よりの目的なのだ。
とはいえ時間が時間だ。藤井が自前の卓上時計をちらっと見て、0時36分に感想戦が終了した。さすがにわかってくれましたか。
我々も控室に戻って感想戦となった。斎藤が「歩を取らずに玉を引くのは自然と思ったんですが、それがまずかったとは、将棋は難しいですね」と言えば、藤井猛も頷きながら、「千日手局から感想戦を始めたからどうしようかと思ったよ(笑)。それにしてもあの将棋が逆転するんだねえ」と感に堪えたようにつぶやいた。
千日手2局を含めて7局、どれもこれも死闘だった。結果こそ藤井の4勝1敗だが、内容は拮抗しており、記憶に残る名人戦だった。
この夏、2人の戦いはまだまだ続く。次は王位戦七番勝負だ。
写真=勝又清和




