現地大盤解説会の解説チームとして、斎藤慎太郎八段、西川和宏六段、古賀悠聖六段、徳田拳士四段、森本才跳四段、崎原知宙女流1級が控室に集まった。
今回の解説会は関西若手棋士の「西遊棋」が主催である。いつも西遊棋を率いている糸谷哲郎八段が、「私は理事なので、徳田くんが取りまとめています」と教えてくれた。
「これは決戦になるだろうね」と話していると、伊藤はおとなしく銀を引き、皆が肩透かしを食ったような表情になる。「あれ、これだと角を打たれて、跳ねた桂が取られるよ?」と糸谷が言う。糸谷の予想通り、藤井が後手陣に角を打ち込んだところで昼食休憩になった。
伊藤は「難易度の高い局面に持ち込むのがうまい」
食事をしながら、記録係の高橋健三段と会話した。初めてのタイトル戦の記録だそうで、「部屋がとても寒いです。設定温度が20度でした」と言う。えっ、冷房の20度! そりゃ寒い。まぁ……和服は暑いもんね。王座戦の主催紙である日経新聞の担当記者は「前日の対局室見分では19度でした」と笑う。そして、「2人ともいつも通りでしたね。伊藤さんも、もうタイトル戦5回目ですし」と付け加えた。
休憩明け……と言っても再開から1時間以上考えたのち、伊藤は引いた銀を再び前進させた。そして飛車を角と交換して、ただのところに銀を成り込んだ。成銀をわざと取らせて金を打ち込むのが狙いだ。調べてみると、なかなか手ごわい。今年の春、叡王戦で伊藤に挑戦した斎藤が感心している。
「当初調べていた順と比較すると、わざと馬を作らせたことになります。伊藤さんの指し回しは不思議で、難易度の高い局面に持ち込むのがうまいですね」
この日、解説会場ではずっと直筆サインの受注販売会をしていたが、特に斎藤は大人気で、ずっと色紙か扇子に署名していた。解説会には220名以上ものファンが集まったそうで、「たくさんお越し下さりありがたいです」と斎藤は笑みを浮かべていた。




