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小説家・津村記久子の日常「渋めの探偵ドラマをずっとつけっぱなしで本読んでます」

テレビっ子作家・津村記久子インタビュー #2

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逆算して描いたサッカーの試合

―― サッカーの試合の描写って難しいんじゃないでしょうか。

津村 難しい、難しい。実際の試合を観ながら書いた話が1つだけあって。それが高知の回(第8話)なんですけど。それ以外は全部自分で作りました。登場人物の気持ちをどこに置くかを最初に考えて。そこから逆算して試合の内容を作るみたいなことをしましたね。

―― サッカーをほとんど観たことがない登場人物が主人公の時と、詳しい人が主人公の時の試合の描写の緻密さが書き分けられてておもしろかったです。

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津村 ひとつひとつのプレーが何のためかわかれへんっていうのを、7話で書いてますね。主人公が何も知らない状態で観た時と、ある程度サッカーを知ってる状態で観た時に見えるものが違うという書き方にしてます。

 

「DAZN」の登場でいろいろ変わりました

―― 津村さんは元々スペインリーグがお好きだと伺っていますけど、Jリーグとは見方は違うものですか。

津村 リーガはもうぜんぜん観れてないですけど、違いますね。Jリーグはその場に行って観られるけど、海外サッカーのチームを見られることはほとんどないので。

―― 海外サッカーはテレビ中継ですよね。

津村 テレビで観ます。テレビで観てない頃はネットで記事読んで監督同士の言い合いとかでゲラゲラ笑ってたんです。単純な楽しさの話ならそういう時の方が楽しかった気もします。想像力がかき立てられて。中学の時に、映画観てないくせに観た気になって。あらすじを文字で読んだ方がおもしろそうな時あるじゃないですか。こんな話やろうなって。映像で観るのはもちろんおもしろいんですけど。

―― 今はどんなチャンネルでサッカーを観てるんですか。

津村 今は「J SPORTS」と「DAZN」(スポーツ専門の動画配信サービス)。「DAZN」の登場でいろいろ変わりました。「DAZN」は録画できないのが困りますね。Jリーグが「DAZN」になったので天皇杯とか以外は「DAZN」でいいんですけど、自転車のロードレースはバラバラになってしまって。大きい大会で言うとジロ・デ・イタリアは「DAZN」なんですけど、ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャは「J SPORTS」なので両方入ってますね。

渋めの探偵ドラマをつけっぱなしにして読書

―― テレビをつけっぱなしにしてる時とかってあるんですか?

津村 今いちばん録画をつけっぱなしにしているのが「AXNミステリー」で録画した『ブラウン神父』です。主演のマーク・ウィリアムズさんって、「ハリー・ポッター」ではロン(・ウィーズリー)のお父さん役やったらしいんですけど、表情とかが仕草が静かにおもしろくてテレビに映ってるとすごい和むし何回見ても発見があって飽きない。そういう画面が静的なもの、年いってる探偵のドラマとかをずっとつけっぱなしにして、本を読んだりしてますね。

―― テレビつけながら本読めるタイプなんですね。

津村 音をすごい絞ってやってますね。テレビがついてないと、寂しいんですよね……。やっぱ「テレビっ子」なんですかね(笑)。

つむら・きくこ/1978年大阪府生まれ。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、09年「ポトスライムの舟」で芥川賞、11年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、13年「給水塔と亀」で川端康成文学賞、16年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、17年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞を受賞。最新作にサッカー2部リーグのサポーターたちの群像を描いた『ディス・イズ・ザ・デイ』。

写真=深野未季/文藝春秋

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