女の人とは海外ドラマ、男の人とは海外サッカーの話をすれば良い
―― 社交の一環(笑)。以前にエッセイで「女の人とは海外ドラマ、男の人とは海外サッカーの話をすれば良い」と書かれてましたね。
津村 そうそう。20代後半になって海外ドラマとサッカーのおかげで、喋れる人の種類がものすごい増えてよかったです。社交として喋るようになった。ほんとに驚くほどみんな『LAW&ORDER』観てますよね。サブカル小僧みたいな感じだった時よりすごく楽に人とのコミュニケーションができるようになりました。テーブルトークRPGの資料集と洋楽やったら喋れる人誰もいない(笑)。
―― 確かに。
津村 これまでで見られる範囲のドラマを観つくした感があるので「スーパー!ドラマTV」とか新しいチャンネルに入らないといけないかなって思ってるんですけど「アメリカのドラマって刺激が強いからな」と躊躇している状態ですね(笑)。
―― そういうドラマから実際に小説に生かせるものってあるんですか。
津村 なんですかね、やっぱり『コールドケース』じゃないですか(笑)。『コールドケース』のずっと同じ文体で進んでいく感じがすごい好きですね。関係者を1人ずつ当たっていって、また最初の関係者に戻るいみたいなふうに探っていく感じが。
『この世にたやすい仕事はない』のドラマはゲラゲラ笑えた
―― 津村さんの作品でも『この世にたやすい仕事はない』が昨年、真野恵里菜さん主演でドラマ化されました。ご自身の作品のドラマを実際に観てみてどう思われました?
津村 ものすごくおもしろかったですよ。ゲラゲラ笑いながら観てました、毎週。『この世にたやすい仕事はない』は、主人公が5つの仕事を経験していくという話なんですけど、一番最初に書いた監視の仕事(「みはりのしごと」)がドラマではだいぶ端折られたんです。
―― そういえば第1話の冒頭で一瞬出てくるだけでしたね。
津村 それがポスターを貼っていく仕事(第5話「路地を訪ねる仕事」)に主人公が就いている時に、その監視の仕事のときの上司が、別のものを監視しているという設定で出てくるんです。それにびっくりしました。すごい! こういう使い方があるんやって……。
―― それは脚本の段階で、津村さんに相談はあったんですか。
津村 「見てください」とは言われましたが、特に私は口出しせずです。
―― 最新作の『ディス・イズ・ザ・デイ』もドラマ化してほしいなと思います。
津村 してほしいですけどね。でも登場人物を演じてくれる方を最低でも22人集めんとあかんっていうのがね(笑)。さらに周りにも人おるから、すごい膨大になるんですけど。
―― 登場人物一人ひとりが「好き」の濃度がみんな違うじゃないですか。そこを全部肯定している感じがすごくいいなって思いました。
津村 ありがとうございます。私が初心者みたいなもんで、サッカーを観る才能自体がそんなにないので。“ない”方の人の話のが実感を持って書いてたりしますけどね。スタジアムで(応援用の)タオル広げて楽しんでいる男の人の話とか。