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息が止まる前に病床の母が発した「声」
その後、介護のスタッフさんとお話をしました。最期の瞬間についてのお話を聞いたのです。
「お父さんのお昼ごはんのお声がけをしにお部屋に行ったんです。お父さんはものすごくよく眠ってらしたんですが、お母さんを見ると、もう下顎呼吸(亡くなる前にみられる呼吸)が出ていたんです。私、お父さんを起こして『お父さん、お母さんがもう逝っちゃう。早く、今だったら声が聞こえているから、お別れして!』と言ったんですよ。
そしたらね、お父さんが『ヨシコー! 愛してんどー!!!』って言ってね、そしたらお母さんがそれに答えるみたいに『がー!』って言ったんですよ。それから息が止まったんです」
私はこの話を聞いて感動しました。
「愛してんど」はご愛嬌として、10日前には呼吸が止まりそうな母に「死ぬな」と呼びかけて旅立ちを止めていた父です。
その父が、この日は、最高のはなむけの言葉で母を見送ったからです。
父の成長を感じ、胸が熱くなりました。
そのうえ、母は脳出血のせいで言葉がうまく出なかったのに、せいいっぱい答えるような反応だったということを聞き、最期まですごい母の生命力に、ここでも大きく驚かされました。
岡山 容子(おかやま・ようこ)
医師、おかやま在宅クリニック院長
1971年、大阪府堺市生まれ。四人姉妹の次女として育つ。1996年、京都府立医科大学卒業後、麻酔科医として京都府立医科大学病院や西陣病院にて勤務、その後在宅医療分野へ転向。2015年、京都市内に在宅療養支援診療所おかやま在宅クリニックを開設し、訪問診療、緩和医療、認知症治療などに携わる。2018年より産経新聞大阪本社地方版でコラム「在宅善哉」を連載開始(筆名:尾崎容子)で。2020年、真宗大谷派にて得度を受け僧侶となる。現在は終末期をみる医師として、地域密着医療を実践するほか、看取りの勉強会を主宰する。著書に『老後を心おだやかに生きる いのちと向き合う医師の僧侶が伝えたいこと』(明日香出版社)など。
医師、おかやま在宅クリニック院長
1971年、大阪府堺市生まれ。四人姉妹の次女として育つ。1996年、京都府立医科大学卒業後、麻酔科医として京都府立医科大学病院や西陣病院にて勤務、その後在宅医療分野へ転向。2015年、京都市内に在宅療養支援診療所おかやま在宅クリニックを開設し、訪問診療、緩和医療、認知症治療などに携わる。2018年より産経新聞大阪本社地方版でコラム「在宅善哉」を連載開始(筆名:尾崎容子)で。2020年、真宗大谷派にて得度を受け僧侶となる。現在は終末期をみる医師として、地域密着医療を実践するほか、看取りの勉強会を主宰する。著書に『老後を心おだやかに生きる いのちと向き合う医師の僧侶が伝えたいこと』(明日香出版社)など。
