親世代にしたら無理からぬことかもしれないが、今度ばかりは川上さんもめげなかった。過去に恋愛関係だった人、それまでの婚活で出会った人とは違い、条件など抜きにして素直に惹かれる男性だ。母親の反対を押し切ってでも結婚したい、そんな強い気持ちになれたことに自分でも驚いた。
川上さんは男性を伴って帰省、両親との話し合いの場を持った。それまでの婚活で精神的に追い詰められていたこと。求めていた「好条件」よりも自然体でいられる相手のほうが幸せを実感できること。そんな気持ちを率直に伝え、男性も交えて話し合った。
「実際に会ってもらったら両親は彼の人柄を理解し、最終的には応援すると言ってくれました。私のほうも彼の家族とすっかり仲良しになってたびたび実家におじゃましたり、一緒に食事に出かけたりしています」
親の理想と違ったかたちでも…
男性と出会って8ヵ月、川上さんは間もなく入籍を予定している。ここに至るまでの婚活では、自分や母親の求める条件ありきで「お相手」探しに必死だったが、いざ選んだのはこれといって突出したところはないバツイチの人、しかもキープしたうちの三番手だった。
「今なら人は中身なんだと思えますけど、婚活中はそうじゃなかった。女性も男性も陳列棚に並んだ商品みたいで、製造年月日はいつ、価格はいくらって年齢や年収がシビアに選別される。いくら中身がよくても手に取ってもらえないまま、どんどん古びて売れ残る。私もそうだったし、ほかの人もそうでしょうけど、自分の人間性を無視されているような苦しさがつづきます」
それでも自身の母親をはじめとして、多くの親たちはその現実がわかっていないと川上さんは言う。もっとがんばれとけしかけたり、こんな人がいいと勝手な願望を押しつけたり、あなたの努力が足りないんだと責めたりもする。
親の知らないところで子どもは努力しているし、悩んだり、迷ったりしているのに、より傷つけるような真似をしてほしくない、それが川上さんの思いだ。
そんな彼女の5歳上の兄、かつて母親が見合いの場を設けたり、街コンに申し込んだりと代理婚活に必死だった兄は今も未婚のまま。川上さんの結婚で、2人の子どものうちのひとりは幸せを得ようとしているが、マッチングアプリやバツイチ男性という現実は、親の理想とはやはり違っていただろう。「完璧を求める」という母親は、思い描いたものとは別の結婚を決めた娘の先に、残る息子とどう向き合っていくのだろうか。
