「これ、タダで聞いていいの?」
午後8時が過ぎた頃、両者はあうんの呼吸でお開きとなり、深々とお辞儀をして感想戦が終了。地上25階での2日間の激闘は幕を閉じた。感想戦を最後まで正座で通した屋敷に「屋敷さんの言った通り、1時間やりましたね」と声をかける。
「序盤から終盤まで中身の濃い将棋でした。永瀬さんの研究手順に藤井さんがうまく対応しましたね」
屋敷は満足げに語った。そして再び永瀬の「序盤研究講座」の話になる。
感想戦の最中、屋敷も私も「これ、タダで聞いていいの?」という表情を浮かべ、山城などは食い入るように盤を見つめていた。
「いやあ、勉強になりました。さすが永瀬さんです。研究の量も読みの量もすごすぎて、もう笑うしかないです」
と屋敷は言い、2人で笑い合った。
「藤井王将は役目を果たしたと言えるんじゃないですか」
控室に戻ると、大盤解説会にゲスト出演していた藤井の師匠・杉本昌隆八段がいたので、話を聞いた。
「永瀬さんの仕掛けは斬新で、とても感心しました。ただ、藤井王将がうまく指し回したと思います。棋王戦もそうですが、だんだんと内容が良くなっていますよね。2つのタイトル戦の結果がどうなるかはわかりませんが、とても盛り上がっていますし、藤井王将は役目を果たしたと言えるんじゃないですか」
そう、ホッとした表情で語った。ところで、杉本さんはなぜこっちに戻ってきたのか――という疑問を抱えつつ、私が毎日新聞の取材に応じていると、恒例の勝者の記念撮影が始まった。
「おお、今回はエビフライの被り物ですか」
和服に被り物……すでに慣れた様子の藤井の後ろから、なんと同じくエビフライを被った杉本師匠がひょっこり登場! これには藤井も「師匠というのは大変だと思いました」と苦笑い。うん、いい笑顔だ。



