「アンニュイ」「ミステリアス」と言われたこともあったが、素顔はよく笑い、よく喋る。今年1月にはラジオ『見上愛のオールナイトニッポン』で2時間ひとりで喋り倒した。とぼけたエピソードも多く、友達だと思って知らないおばあさんに歩きながら話しかけ続けていたこともあったという。

エゴサはしない、睡眠時間も削らない

『きれいのくに』ではコンプレックスの塊のような役を演じたが、本人は自己肯定感が高いと自認している。承認欲求も低く、エゴサも一切しない。心身を健やかに保つため、睡眠は絶対に削らずに7時間はマスト(とはいえ、毎日のようにソファで寝落ちしているとか)。食べたいものを食べたいときに食べ、友人と過ごす時間も大切にしている。

 アンバランスや不安定なところがなく、やりたいことを着実にクリアしていく姿は、いかにも“令和の天才”という感じだ。うまくいかないことがあれば、客観的に見て、なぜその失敗をしたのか徹底的に分析する。なにごとも客観視できるのは、演出家としての目線なのかもしれない。

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映画『国宝』で日本アカデミー賞新人賞に選出(見上愛のインスタグラムより)

 大河ドラマを経て朝ドラのヒロインに。俳優として順調すぎるキャリアを築いている見上だが、役者を生業として生きていこうと決意したことは一度もなかったという。

「将来の夢は、小さい頃から何かを表現することが好きだったので、それにはずっと携わっていたいです。自分自身の軸はもちろん持っていたいですが、『役者だから』などと捉われすぎずに、むしろどんどん揺らいでいきたいなと思っています」(with digital 2022年12月23日)

感銘を受けた言葉「人間は多面体」

「マルチタスクが大好き」と堂々と言い、自ら編集長になってアートマガジンを作ったこともある。暇を見ては舞台の脚本も書く。今はアイスランドと陶芸にハマり、夢を聞かれると「アイスランドで陶芸家になりたい」と答える。あらゆる表現に臆さずチャレンジする見上の理想は、やっぱり寺山修司なのだ。彼女が感銘を受けた寺山の言葉がある。

「寺山さんの残した『人間はもともと多面的なものだから、いろいろやることをわざわざマルチと言わなくていい』みたいな言葉に出会って、やりたいことをひとつに絞らず、いろいろやってもいいんだと思えるようになりました」(GRIN 2021年12月24日)

NHK『風、薫る』公式Xより

 演出家志望だったにもかかわらず、俳優の仕事をやろうと思ったのも、この言葉に後押しされたからだ。今は俳優業に邁進している見上愛が、将来的にどのような“多面体”を見せてくれるのか楽しみにしたい。

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