宇宙飛行士たちは、地球とは全く違う環境でどんな暮らしをしているのか。これまでに何度も宇宙へ行ったことがある野口聡一さんの新著『宇宙でラーメンは食べられるか 宇宙暮らしのロマンと現実』(幻冬舎)から、野口さんが「宇宙生活でもっとも大事な道具」とするちょっと意外なアイテムを紹介する。
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持ち込める私物は「1.5キロ」だけ
あなたは旅行のパッキングは得意ですか? 旅慣れていてパッキングはお手のものという人も、荷物は必要最低限しか持たないミニマル派の人も、宇宙で暮らすためのパッキングには頭を悩ませるかもしれません。
飛行機の場合、航空会社や座席クラスなどにもよりますが、機内に持ち込む手荷物は「合計で10kgまで」が一般的です。預け入れ手荷物なら「一人20kgまで無料」ということが多いですよね。では、宇宙船には私物は何kgまで持ち込めるでしょうか。
私が2009年にロシアのソユーズ宇宙船に乗ったとき、私物の持ち込みは1.5kgまででした。私が宇宙飛行士という職業を選ぶきっかけになった、立花隆さんの著書『宇宙からの帰還』の単行本はおよそ400g。これだけで重量制限の4分の1を超えてしまいます。
「それほど少ない荷物で、宇宙での生活が成り立つのか」と疑問に、あるいは不安に思った人もいるかもしれません。じつはこれ、「私物」というのがポイントです。プロの宇宙飛行士として宇宙に行く場合、衣服も、歯ブラシ、シャンプー、ひげそりといったグルーミング用品も、すべて任務に必要なものと見なされて支給されますし、私物とは別枠で持ち込みが可能なのです。
「それなら、1.5kgの私物枠なんていらないのでは?」と考える人もいそうです。たしかに、私物がなくても生活と業務には困らないでしょう。それでも、どうしても宇宙に持って行きたいもの。私にとっては、前述の『宇宙からの帰還』がその一つでした。『宇宙からの帰還』を持って行けば、ソユーズの私物枠は残り1100gしかありません。
ここから、私のグラム単位で荷物を削る戦いがはじまりました。
