「アン、この部分には、どういう心理が働いているか解釈するのに君の見識がおおいに役立つ。それに、君にしかわからないこともあるからな。私は結婚して20年も経つっていうのに、いまだに女性の気持ちがまるでわからない」
捜査官たちが笑い、私も角が立たないようにいちおうにっこりした。でも、考え直した。
「プライベートについてはプライベートな時間に話してちょうだい、ロイ。私は事件の解決のほうに興味がある」
一瞬室内がしんとしたが、人のいいヘイゼルウッドらしく、すぐにおずおずと謝罪した。
「だが、それは正しい意見だ」
ウォーカーが言った。
「犯行後の行動がこのケースでは重要になってくる。まず考えなきゃいけないのは凶器の問題だ。誰から始める?」
レスラーが先陣を切った。
動揺している犯人はすぐに自宅に戻ろうとする
「襲撃がずいぶん無秩序だったことを考えると、車で帰宅する途中で凶器を捨てた可能性が高い。あまりよく考えずに、窓からただ投げ捨てたのかもしれない。犯人は車に戻ると、まっすぐ帰宅したと考えるのが妥当だろう。というのも、この人物は生まれてこのかた、こういう行為を、つまり人を襲撃するなんてことを経験したためしがないと思うからだ」
「その点ではボブ(注:ヘイゼルウッドによるレスラーの愛称のこと)に賛成」
私は同意した。
「これは心に深い傷を残す行為で、殺人傾向のない人、そしてもちろんこの少女には殺人傾向はなかったと思うのだけれど、そういう人が行為後に最初にするのはどこか安心できる場所に行くことよ。彼らは現実を締めだせる、自分を守ってくれる温かい場所を探す。このケースでは、もし犯人が女子高生だとすれば、即座に自宅に戻るでしょうね」
「それはありがたい」
ダグラスは言った。
「帰宅途中に窓からナイフが投げ捨てられたとして、もし警察のもとに容疑者リストがあるなら、車で帰るいちばん合理的なルートを捜索すれば凶器は見つかる」
「それに、運転手は車内を掃除して証拠を残さないようにしただろうな」
ヘイゼルウッドが続けた。
「車が借りものだったとしたら、いよいよそうしただろう。翌朝早起きして、地元の洗車場にさえ行ったかもしれない」
「そこは事件の鍵となる時間帯ね」
私は言った。