犯行後の犯人の生活パターンの変化
「アンサブ(注:[Unknown Subject]特定前の容疑者)の行動は犯行直後に今までとはがらりと変わったかもしれない。帰宅した夜は誰にも会わなかったとしても、家族と同居している女子高生なら、翌朝には誰かしらと顔を合わせただろうし、事件後すくなくとも数日は沈んで内にこもる様子だった彼女に、家族は気づいたんじゃないかな。
不安そうだったり、動揺したり、いらいらしたり、何か考え事をしてぼんやりしていたりしたかもしれない。普段の生活パターンにも変化が見え、食習慣や睡眠の様子もいつもと違ったり。顔や容姿も目に見えて変化することがある。服装に気を遣わなくなり、どんな格好をするか、どんなふうに見えるか、気にしなくなるの」
「地元警察は葬儀で異常に気づかなかったのかな、ウォーカー?」
ダグラスが尋ねた。
「葬儀に出席した犯人が異様なほど無表情だった、みたいな出来事を目にしたことがある。それに、たいてい彼らは早めに葬儀の場から姿を消す」
「警察にはもう目星がついているはずだ」
レスラーは主張した。
「容疑者はそう多くないだろうし。捜査の過程ですでに犯人から話を聞いていて、ほかの学生と比べて不安や動揺が強いことに気づいたはずだ。本人が捜査に協力したいと申しでた可能性だってある。どうなんだ、ウォーカー?」
「結構だ、ご一同」
ウォーカーが急いで幕引きを始めた。
「このへんで充分だろう。僕がプロファイルをまとめて、オリンダ警察に送っておく。何か進展があったら知らせるよ」
これで終了。セッションが終わると、捜査官たちは頭のスイッチを自分の世界のほうにカチリと切り換える。彼らはそういう気持ちの転換に慣れていた。
ふんだんな写真で細部まで分析された残虐な刺殺事件から、たちまち家族との週末のプランとかオフィス内の人事抗争とかワシントン・レッドスキンズ(注:メリーランド州ランドーバーに本拠地をおくNFLチーム)のヘッドコーチ、ジョー・ギブズの采配とかについてのおしゃべりに、即座に飛び移る。
ある意味ぎょっとするが、FBIが彼らを採用したのはそういう資質があることも大きい。程度に差こそあれ、行動科学課の捜査官は影響を受けずに事件に没頭でき、実際の恐怖と感情としての恐怖を切り離せる。生き延びるために客観性を保つ自分なりの方法があるのだ。