かつての豪邸は⋯

 私が現地を訪れた際、かつての豪邸は、立派な高級温泉旅館となっていました。

 人が死んだ土地を誰かが買って宿泊施設にする場合、土地の売買の際には事故物件であると告知する義務があります。一方、開業したあとに利用する客に対しては、告知義務は生じません。今その旅館は、柏木氏のことなど知りもしない人が泊まっているのでしょう。

 柏木氏の豪邸は規模が大きく、丸ごと旅館に転用してもなお、敷地内に増築する余裕がありました。それが結果的に、事故物件であることが伝わりづらくなっています。

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 この件についてもう一つ私が注目したのは、旅館の名前です。旅館の名前には、“寺”という文字が含まれているのです。寺の字は地名とは関係がありませんし、同所は旅館であって、宗教施設ではありません。

 凄惨な事件が起きた土地が、祈りや鎮魂を想起させる寺の名を冠している。私は命名者に何らかの畏怖や意図があるのではないかと感じて、感慨深く思いました。関係者も同様ではないでしょうか。

 ちなみに豪邸時代も、広すぎてお寺だと勘違いされたこともあるそうです。

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