当初は「白蓮擁護派」が圧倒的だったが…

 事件報道の反響は大きかった。大阪朝日(大朝)は10月24日付夕刊で、一般からの投書が五百数十通を超えたと報じた。報道がはじまったのは22日付朝刊からだから2日足らずでこの数。すさまじい反響だった。

 内容を分けると、「白蓮の行動はやむを得ず賛成」が115通、「悖徳(背徳)行為で反対」が43通、「中立」31通だった。賛成論者に女性はいたが、反対論者にはゼロ。朝日のニュースを見たからだったにしても擁護が圧倒的だった。

 大朝は事件約1カ月前の9月18日付朝刊から、「恋愛至上主義」をうたい上げた英文学者・厨川白村の「近代の戀愛觀(観)」を20回にわたって連載。のちにベストセラーになる。その影響もあったかもしれない。

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 ところが、東朝10月31日付朝刊では一変。「燁子の行動に反対55」「賛成43」「中立25」と賛否が逆転する。この間に大毎の「燁子に與ふ」や傳右衛門の主張が伝えられ、彼への同情も表れてきたためだろうか。反対の理由は1.情人を得た後であること、2.離縁状を公表したこと、3.同棲10年を経ていること――だった。

東京朝日に寄せられた読者の反応も反対が賛成を上回った

「白蓮悲運とのみは片づけられぬものを、読者は鋭く感じとったとしか思えない」と『恋の華・白蓮事件』は言う。報知は10月25日発行26日付夕刊で「白蓮の許に集る同情と悪罵」として、中野の隠れ家に手紙が一度で百数十通届いていると報道。26日発行27日付夕刊では、山脇高等女学校(現山脇学園中学高校)の4、5年生が事件について討論。白蓮に同情を表わしたと伝えた。

「白蓮に同情と悪罵」(報知)

 たしかに事件をどう判断するか難しい点があり、それは各紙の論説にも反映した。東朝は10月23日付の社説で「燁子事件に就(つい)て」を取り上げ、読売も10月24日付で「現代世相の一面」として論じたが、いずれも愛のない結婚を否定しながらも、事件にはさまざまな側面があり、一概に判断できないとした。