退位に関する天皇のビデオメッセージ公開から約5カ月。政府は将来にわたって退位を可能にする皇室典範改正ではなく、一代限りで退位を認める特例法を軸に法整備の検討を進めており、今月下旬にも、政府の有識者会議が論点整理を取りまとめる見通しだ。
そんな中、天皇の学習院初等科から高等科までの同級生であり、卒業後も親交を深めてきた明石元紹氏(82)が、有識者会議での議論に危機感を募らせている心境を明かした。
明石氏が驚いたのは、昨年11月に3回にわたって行われた、憲法や歴史の専門家16人へのヒアリングだという。16人の専門家のうち、退位に反対したのは7人。そのうちの一人であるジャーナリストの櫻井よしこ氏は、こう述べている。
〈天皇様は何をなさらずともいてくださるだけで有り難い存在であるということを強調したいと思います〉
明石氏はこう指摘する。
「他の反対派の方々からも同様に、天皇陛下は存在そのものに意義があるのだという意見が出ていました。高齢でご活動ができなくなっても、国民のために祈り続けてくだされば、それでよいと。こうした意見は、長きにわたって象徴天皇のあるべき姿を模索し続けてきた陛下のご努力を踏みにじるようなもので、残念でなりません」
明石氏は、ビデオメッセージ公開前の昨年7月21日に天皇と直接電話で話をしている。
「ご自身の代だけではなく、将来を含めて譲位ができるようにしてほしいという気持ちをにじませていらっしゃり、将来の日本の姿を見据えておられるように感じました」
その後、政府で退位に関する問題を取り仕切る杉田和博官房副長官に電話の内容を伝えたが、「将来まで含めた恒久的な制度は、国会議員の総意を得るのが大変難しい」と、取り合おうとしなかったという。
「まるで一代限りの特例法で対処することを、すでに決めているような口ぶりでした。政府は、有識者会議で専門家の意見を聞いているふりをしながら、実際には方針を初めから決めていたのではないかと、勘繰らざるを得ません」
同級生として天皇の姿を見つめ続けてきた明石氏による政府への問題提起や、天皇からの電話の詳細は、『文藝春秋』2月号に掲載されている。
この記事の全文は「文藝春秋」2017年2月号でご覧ください。