民間企業の参入で、8倍の料金格差が20倍に広がるおそれ
稲富修二 国民民主党・衆院議員
「コンセッション方式を導入すれば民間の効率的経営が必ず導入できるというのは幻想だ。国民の生活を脅かしかねない」
朝日新聞デジタル 12月7日
水道事業にコンセッション方式が導入された際の懸念は多い。
政策コンサルタントの室伏謙一氏は、改正水道法は「民営化ではない」とした上で「制度的にはどうあれ、地方公共団体が事業者の選定や運営権契約の内容等を誤れば、海外の『民営化』事例のような水道料金の高騰やサービスの質の低下等が起こりうるということである」と指摘する(ダイヤモンドオンライン 7月31日)。
水ジャーナリストの橋本淳司氏は「民間企業の水道事業への参入により、現在8倍の料金格差が20倍程度になるという予測がある」とし、「収益性の望めない地域では、受け皿となる企業が出てこない可能性は十分考えられる」と述べている(FNN PRIME 12月6日)。拓殖大学環境政策学の関良基教授は「20年間の長期コンセッション契約だと、民間は値上げがかなり自由にでき、行政のチェックが働かない独占価格になる怖れがある」と懸念を示した(J-CASTニュース 12月5日)。
もっとも重要なライフラインである水に関して、ろくに審議もせず、調査もおろそかなまま、法案が通ってしまうのはやはり異常だろう。
竹中平蔵氏、菅官房長官はそろって会議に出席
竹中平蔵 東洋大学教授
「コンセッションは成長戦略や行政改革、財政再建の手段になる」
菅義偉 官房長官
「(コンセッションは)日本の成長に大きな役割を果たすので、政府として、導入に積極的な自治体を応援していく」
ともに産経ニュース 1月13日
争点となったコンセッションは2011年のPFI法改正で可能になった。PFIとは簡単に言えば「官民連携」と言われるスキームで、公共施設の建設や維持管理、運営などを行政と民間が連携して行うことを目指す。安倍政権では13年に閣議決定した「日本再興戦略」で公共部門の民間開放の拡大を表明。その柱として、コンセッションを推し進めてきた。16年に閣議決定された「日本再興戦略2016」では「10年間(2013年度~2022年度)でPPP/PFIの事業規模を21兆円に拡大する」としている。
コンセッションの意義を唱え続けてきたのは、内閣日本経済再生本部産業競争力会議(民間)議員、内閣府国家戦略特別区域諮問会議(有識者)議員などを務め、同時にパソナグループ取締役会長、オリックス社外取締役などを務める竹中平蔵氏である。竹中氏は「私は、民主党政権時代から、PFIの一環としてコンセッション(インフラ運営権の売却)が要だと提案してきました」「財政に魔法の杖はないと言いますが、PPP・PFI、特にコンセッションには、数十兆円規模で財政に貢献できる可能性があるのです」などと語っている(東洋経済オンライン)。
今年1月にはコンセッションに関するシンポジウム「コンセッションフォーラム2018~地方創生の未来~」(産経新聞社主催、内閣府後援)が開かれ、菅義偉官房長官、竹中氏らが参加し、コンセッションの意義を改めて強調した。