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「表現の不自由展」で炎上。あいちトリエンナーレの「歴史ネタ」はなぜ面白いのか?

軍歌、君が代、教育勅語、特攻隊などが参照されていて驚いた

2019/08/21

小津安二郎や横山隆一と、プロパガンダ

 シンガポールを拠点とする作家ホー・ツーニェンは、この喜楽亭の建物と歴史を存分に生かした作品を作ってみせた。それが「旅館アポリア」である。

 観客は、4つの部屋をめぐり、7つの映像を観るのだが、その体験はなんとも絶妙で表現しがたい。映像の合間に轟音が響き、建物の柱や障子がガタガタと音を立てて震える。これが薄暗い照明とも相まって、まさに現場でしか味わえない、独特の緊張感を生み出している。

 内容は、旅館の歴史にはじまり、草薙隊の歴史、さらには京都学派を経て、小津安二郎や横山隆一のプロパガンダとの関わりにまで展開する。

 歴史好きには堪らない仕掛けが随所に凝らしてあり、ぐっと心を掴まれる(あの大きな扇風機はやはり、神風号を操縦した飯沼正明が巻き込まれたプロペラと関係しているのだろうか?)。映像は全部で84分(12分×7)もあるものの、ああだこうだと解釈が止まらず、まったく退屈しなかった。

喜楽亭の内部。映像以外は撮影可能。

 じつは、わたしはこの作品の資料調査に少し協力している。訊かれるままに資料やメッセージを送っただけだが、「同期の桜」にせよ、「フクチャンの潜水艦」にせよ、こういう風に使われるとは思わず、たいへん感銘を受けた。その自由な連想を見習いたいとも思った。

 最後に出てくる、横山隆一の言葉にしてもそうだ。横山は、戦時下に描いた国策漫画について問われて、こう答えている。

「僕は後悔してませんよ。国民としての義務を僕なりに果たしたんですから」「今でも国家要請があれば同じことをやります」

 歴史上の人物を現在から批判するのはたやすい。だが、「自分が同じ状況に置かれたらどうするか」と問われれば、なかなか答えが出ない。表現者ならだれもがそう思うのではないか。じつに今日的な締めだと感じられた。