国語はもっと“実用的”になるべき?
PISAの例題からは、文章を情報として論理的に評価・分析する力を見ていることがわかる。物語文における主人公の心情を聞くような問題と違うことは明らかだ。しかしだからといって、「文学など読まないで、もっと実用的な内容の書籍や新聞を読ませるべきだ」とはならない。理由は2つ。
1つめの理由。PISAの指標は文化に依存しない最大公約数的な「リーディング・リテラシー」を経済的な有用性の観点から評価するためのものであり、その評価基準に過剰適応すれば、それぞれの国や地域の文化に根ざした「国語教育」の目的が損なわれる可能性が高い。
2つめの理由。小説などフィクションを読む子どもの「読解力」の平均点は531点で、読まない子どもより45点高かった。同様に新聞を読むグループとそうでないグループの得点差は33点だった。つまり、「新聞を読むか読まないか」よりも「小説を読むか読まないか」という要因のほうが、平均得点の差が大きい。文学鑑賞と論理的な読解力は、単純に切り離せるものではなさそうなのだ。
文学軽視!? 高校で導入される「論理国語」は妥当か
実はすでに2018年に告示された新学習指導要領の解説書において、文部科学省は以下のように述べている。
<調査の方式がコンピュータを用いたテスト(CBT)に全面移行する中で、子供たちが、紙ではないコンピュータ上の複数の画面から情報を取り出し、考察しながら解答することに慣れておらす、戸惑いがあったものと考えられるが、そうした影響に加えて、情報化の進展に伴い、特に子供にとって言葉を取り巻く環境が変化する中で、読解力に関して改善すべき課題が明らかとなったものと考えられる。>
前回2015年PISAにおいてすでに「読解力(リーディング・リテラシー)」低下の傾向が見られたことへの見解であり、2022年度から実施される新学習指導要領にはこれも踏まえた施策がすでに盛り込まれている。「国語」の科目構成は下記の図のように変更される。
高校国語史上最大の方針転換ともいわれる。ある教材出版会社の編集者は「現代文・古文・漢文といった従来の教材のジャンルが解体され、教養的科目と実社会との関わりを意識した科目の2系統に分かれたと考えてよい」と説明する。