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児相職員は実務者会議を中座、有識者のインタビューも拒否

 事件では、千葉県が管轄する柏児童相談所と野田市の連携不足も露呈した。例えば、野田市の検証報告書によると、心愛さんの一時保護解除にあたって、児相が定めた条件の一つが「勇一郎被告と心愛さんを2人きりで会わせない」というものであったにもかかわらず、野田市には「2人を絶対に会わせてはいけない」と誤って伝わり、3カ月以上、間違いに気づかなかった。そもそも一時保護解除自体も、当日になってはじめて解除することを市に連絡があったという。

虐待死した栗原心愛さんを一時保護した千葉県柏児童相談所=20日、柏市 ©共同通信社

 事件後、県も野田市も「関係機関との連携を強化する」と繰り返したが、事件後初の要保護児童対策地域協議会の実務者会議で児相職員が中座したり、野田市側の検証のため、有識者が児相職員に再三インタビューを申し込んだが、県の報告書がすでに提出されていることを理由に拒否したりするなど、対立姿勢は続いているようだ。

 野田市が今年1月23日に公表した検証報告書では県の問題点として、「安全が確保されている状況ではないのにもかかわらず、一時保護を解除した」、「『叩かれたのは嘘』の手紙は書かされたものであると聞いたのに、行動を起こしていない」など37項目にわたって指摘した。

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 千葉県が昨年11月に発表した検証報告書では、心愛さんが小学校のアンケートで虐待を訴えたことについてこう記している。

「児童本人がこうした訴えをすることは稀であり、勇気をもって訴えた本児は、何としても守られるべきだったし、救える命であった」

 勇一郎被告に対する裁判員裁判は2月21日から始まる。本来、我が子を「守るべき」だった父親の勇一郎被告がなぜ、心愛さんを虐待し、命を奪ったのか。裁判で全てを語ることが期待される。