「過去最高って言ってもいいのかもしれないですね。数年前なら誰が出ても優勝していたんじゃないか、というレベルの高さでした」
大会の締めに審査員のダウンタウン松本人志がこう語るほど、2019年のM-1は沸いた。では何がこの“神回”を作ったのか。出場した漫才師たちのインタビューから、その答えに迫っていく。
事前に決勝進出を決めていた9組中7組が初出場組という異例の大会。そのなかでも、唯一の20代コンビとして挑んだからし蓮根。「ファンになった」「初々しい」と上沼恵美子や松本から称賛の声が集まった。
前年に霜降り明星が最年少優勝を果たし、その記録更新も期待された2人が経験したM-1とは? (全3回の1回目/#2、#3へ)
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「どーもー、からし蓮根です」の「ど」でわかった
――漫才師の方は、最初の30秒で決まるというようなことをおっしゃいますが、M-1決勝のとき、お2人はどうだったのでしょうか。
青空 30秒というより、もう出た瞬間というか、「どーもー、からし蓮根です」の「ど」ぐらいでわかりしたね。
――「ど」のとき、どうだったのでしょう。
青空 めっちゃ硬かった。
――テレビ中継の録画を見直していて、とても印象的だったのは、2番目にかまいたちさんの名前が呼ばれたとき、他の出演者が拍手している中、2人だけ固まっていたんです。
伊織 ここでかまいたちさん来るんかってなってたんで……。
青空 容赦ないなというか。
――ぼう然としていましたよね。
伊織 ほんとのこと言うと、笑神籤、仕組まれてると思っていたんです。やらせだろう、と。
――皆さん、そうおっしゃいますよね。
伊織 裏で絶対、操作してるんやろうと思ってて。クジが導入されてから、2年連続、初出場組がトップバッターだったじゃないですか。今回、トップバッターはまた初出場のニューヨークさんだったので、ほら、やっぱりと。そしたら2番手で「エッ! ここでかまいたちさん?」となって。
青空 これはガチやなと。トップの次に不利じゃないですか。
――ただ、そのかまいたちは大爆笑をさらって、660点という高得点を叩き出しました。
伊織 優勝はかまいたちさんやって、めっちゃ思いました。
青空 って、なりましたね。正直。
伊織 その後、3番手の和牛さんが652点を出して、この2組は決まりやと思いました。でも、この大会はそこからがすごかった。
――かまいたちのネタは舞台裏のモニターで見てたのですか。けっこうみなさん席から離れていて、他のコンビのネタは見てないと話していましたが。