1997年。IBM社が作ったチェスAI『ディープ・ブルー』が人類最強のガルリ・カスパロフ(当時のチェスの世界チャンピオン)を倒した時、将棋のプロ棋士の多くはこう言いました。
「将棋はチェスより複雑だから俺が生きてるあいだは負けない」。
その16年後の2013年。山本一成さんが作った将棋AI『ポナンザ(Ponanza)』が佐藤慎一四段(当時)を倒した時、囲碁のプロ棋士の多くはこう言いました。
「囲碁は将棋より遙かに複雑だからコンピューターに負けることは絶対にない」。
しかしそのわずか3年後の2016年。ディープマインドが作った囲碁AI『アルファ碁(AlphaGo)』が世界トップ棋士の李世ドル(イ・セドル ※ドルは「石」の下に「乙」)を倒した時、全世界は大慌てしました。
「人間の仕事が機械に奪われる!」
日本国内では、電王戦の影響もあって将棋AIがプロ棋士を破った時のほうが大きく報道された印象ですが、世界規模で見れば囲碁AIが人類トップを破った時のほうが遙かに大きなニュースになりました。
それはなぜか?
一つは、アルファ碁を作るのに、超巨大IT企業であるGoogleが関わっていたこと。
そしてもう一つは、そのAIが『ディープラーニング』(深層学習)という技術で作られたということ。
今後、将棋でもディープラーニング系のソフトが主流になるであろうと予測されています。
果たして何がどう変わっていくのでしょう?
ディープラーニング系のソフトは、どんな囲碁を打つのか?
導入するのは難しいのか? 開発規模は? 研究にどう生かせばいいのか?
そんな囲碁AIについて、開発に携わったこともあるプロ棋士・大橋拓文六段(@ohashihirofumi)からお話をうかがいました。
取材・文/白鳥士郎
進藤ヒカルの同期!?
──初めまして! 本日はよろしくお願いします!
大橋:
大橋です。よろしくお願いします。
──以前からツイッターでやりとりさせていただいているので、あんまり初めましてという感じはしませんね(笑)。