──人間の知識が『ゼロ』だからゼロタイプですか……確かにそう聞くと、人類とは全く違う囲碁を打ちそうですね。
大橋:
ただ、現在は変化の途中なんじゃないかと思っていて。ものすごく強いAIが出てきたら、そこに統合されていくのではないかなと。
──将棋ソフトは個人が作っている感じなんですが、囲碁は海外の大企業が手がけているものが多いですよね? その中でもやはりまだ、アルファ碁が強いんですか?
大橋:
こればっかりは実際に対戦してみないと分かりません。しかし、アルファ碁は引退してしまってもう3年たちました。個人的には現在の最強AIはアルファ碁ゼロより強いのではないかと思います。
──あ、引退しちゃったんですね。
大橋:
今は『絶芸』と『ゴラクシー(GOLAXY)』が2強です。
──絶芸は中国のテンセントが開発したAIでしたっけ? メッセンジャーアプリのウィーチャット(WeChat)で有名な。
大橋:
そこが今日の核心です!
──あ! ついに核心に……!
中国企業の代理戦争!?
──現在の囲碁AIは、Googleでも日本でもなく、中国企業が作ったものがトップを走っていると……。
大橋:
そうですね。今は中国が強いです。
ドワンゴさんが『ディープ・ゼン・ゴ(DeepZenGo)』を作っていた時も、絶芸とよく激突していました。
──2018年の囲碁電王戦FINALをもって引退となった囲碁AIですね。羽生先生と一緒に国民栄誉賞を受賞された井山先生にも勝つほど強いソフトですが、そのソフトのライバルが絶芸だと。
大橋:
絶芸はアルファ碁と同じように、とにかく開発規模がすごい。やはりクラウドを自社で持っているというのは強みなんですね。
──企業の規模がそのままソフトのパワーになっていると。
大橋:
『絶芸は夜、強くなる』という笑えないジョークがありまして。
──? 夜間に開発を行うんですか?
大橋:
中国の人々が寝静まって、10億人分の情報を処理してるテンセントのサーバーがあくと、囲碁を打ち始めると……(笑)。