大橋:
そうなんですよ! AI研究会では、そういう情報を共有していますが、あれを見たときは感動しました。
──今後、ディープラーニング系の将棋ソフトが一般的になった時に危惧されるのが、AWSなどのウェブサービスを使って動かすことのハードルの高さです。CPUで動かす将棋ソフトが出てきた時ですら、扱える棋士とそうでない棋士のあいだで不公平感がある……という議論がありました。
囲碁の世界では、そういった設定も個々人でやっているのでしょうか? それともどこかの企業がやってくれたり?
大橋:
囲碁界では、棋士の間で助け合っていますね。研究会を立ち上げた最初の頃、金子真季さん(二段)が設定を憶えてくれて、みんなの設定をしてくれました。
──ふむふむ。
大橋:
それで若手棋士のあいだで『プロみたいだ(コンピューターの)』って(笑)。
──ははは! たとえばノートパソコンだとどのくらいのスペックで動かせるんでしょう?
大橋:
RTX2070とかのGPUをノートパソコンに積んでいるのがありますね。普通だったらそれで十分です。ただ、AI好きの棋士だとデスクトップでもっと性能を追求しますね。
──大橋先生と上野先生が過去にご登場なさったインタビューで、上野先生は自分の棋風に合うからと、少し前のバージョンのソフトを使っておられると語っておられました。囲碁の世界では打ち方の違う複数のソフトがあって、しかも敢えて古いバージョンのものを使うこともある……ということなんでしょうか?
大橋:
ずっと使ってると、脳内にAIの評価値がインストールされてくるので(笑)。AIを急に変えてしまうと、ぜんぜん違っちゃったり。そうすると形勢判断がおかしくなってしまうことがあるんです。
──だとすると……使用するソフトで流派が全く異なる、みたいな感じに?
大橋:
昔のアルファ碁……李世ドルさんと対戦したころのAIは人間の棋譜を学習していました。その後に自己対局のみで強くなったアルファ碁ゼロというAIが登場。いわゆる『ゼロタイプ』、これらを比べると評価値が全く違ったりします。