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──『延期』という判断と、『中止』という判断の2つがあるのかな……とファンは思っていたのですが。そのあたりはいかがでしたでしょう?

桑高:
 当時は、(長距離の移動を伴う)将棋会館で行う対局すらストップするような状況でした。ですから中止も考える余地はあるのかなと……。

──東西をまたいで行う対局はストップしていましたから、順位戦ができない。三段リーグもできない。そんな状況でしたね。

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桑高:
 ただ、1年間全ての対局を止めてしまうというのは、現実的ではないと思いました。なので『どこまで延期できるのか?』という判断が求められました。次の期の順位戦が始まるのが6月下旬なので、そこまでに名人を決めたいと。

 それでも無理なら、名人戦の敗者の順位戦を別のスケジュールにして、他の対局は通常通り進めようと。

──なるほど。対局スケジュールも大変な状況ですが……開催地が全てキャンセルになりかねないような状況でしたよね?

桑高:
 そこは現地の判断もあるわけです。東京は感染者が多くて無理でも、地方は『うちはできるから』という場合もある。その逆もありうるので。

──ああ、確かにそうですね……。

桑高:
 4月の段階では状況がよくわからなかったんですが……5月くらいになってくると、開催予定の旅館がそもそも営業していないという状況になっていたりということも起こっていて。

──えっ!

桑高:
 あるホテルに5月くらいに最後の下見に行ったんですが、従業員さんがいらっしゃらないんですよ。休みを出しているわけです。

──ああ、そうか。休業補償が……。

桑高:
 だから名人戦をやる週から開けますと言っていただいて。

──対局のためだけに!?

桑高:
 その週から緊急事態宣言が明けて、他県の人も迎え入れる準備がようやく整ったという感じでした。

──綱渡りだったんですね……。しかし前夜祭や大盤解説会を開けない状態で名人戦をやっても、会場となる旅館やホテルにとっては、経営的にかえって苦しくなってしまうような面もあったのでは?