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「あと、飛車とか角をどんどん切っていって。相手の陣形を荒らして、金銀と交換できたらいいという感覚だったと思うんです」

──はい。昔のソフトは金銀の価値が高かったですよね。

それが新しい感覚だった部分もあったし、でもちょっと行き過ぎだった部分もあったと思います。たぶん今のソフトも、その中間くらいの部分に落ち着いたんだと思っていて

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「あとは、角換わりだと5八金型が主流でしたけど、4八金がいいとされて。100点とかプラスで出るんですけど。けどそれも、指していかないとわからない。何となく『いいのかな』とは思うものの、たくさんソフトの将棋を見たり、自分たちで指していって、ようやく共通認識になっていったと思うんですけど。そういうところまで、やっぱり時間がかかるというか」

「中盤の感覚とかもそうですし、序盤の駒組みとかも。やっぱり数をたくさん見ていかないと、判断がつかないというか」

 

「あとは、ソフトは人間よりもたくさん読んでいる。人間はどうしても(読みの量が)少なくなってしまうので。だからソフトが指しこなせる将棋だとしても、人間が指しこなせない将棋も当然あるはずなので。そういうのを……『これは指しこなせる』『これは難しい』『難しいけど、あとちょっとやれば指しこなせるようになるかもしれない』そういうところがわかってくるまで、時間がかかったということですかね」

『評価値はいいけど指しこなしづらい将棋』と『評価値が悪いけど指しこなしやすい将棋』

──ソフトの感覚と人間の感覚、そのどちらが正しいかという検証作業は、具体的にはどういう方法になるんでしょう? 読み筋を比較するだけなのか、それともソフトと実際に対局するのか。

「ええっとぉ…………指すとやっぱり、ソフトが勝つんですよね。無理攻めでも。ずっとそんなに、ちゃんと受け続けられないので。それで『あ、ソフトが正しいのかな』って」

「でもそういう感覚で、実戦で他の棋士に指すと……やっぱり自分の感覚では、上手くいかないので」