──ああー……。
「それが結構、続いてましたね。無理攻めして、負けて。だからどっちが正しいのか、わかんないなー……って思いつつ」
「結局、その中間くらいの感覚に落ち着いて。でも、自分が『そうなのかな』と思ったくらいで、ソフトも『技巧』とかが出てきて」
「技巧は結構、受けが強かったので。自分の元々の感覚と近いなぁと思いましたし」
「だからソフトの側でも、中間の評価をするものが増えてきた感じでした」
──なるほど……。
『技巧』は2015年の第3回将棋電王トーナメントで5位になったソフトだ。
第3回将棋電王トーナメントは優勝ソフトのポナンザのみ人類(山﨑隆之叡王)と対局することになったため、技巧は公の場で人類と対局していない。また、世界コンピュータ将棋選手権でも、ポナンザに次ぐ準優勝という成績だった。
それでも技巧が非常に高く評価されたのは、指し手が人間に近いとされたからだ。
実は、私も『りゅうおうのおしごと!』で棋譜を作る際、技巧の読み筋や評価値をベースにしている。その読み筋を、監修のプロにチェックしてもらい、ストーリーに落とし込むという作業だ。
現在では、様々な用途に特化したソフトがたくさん開発されているため、他のソフトも用いているが、技巧はよき相談相手として今でも活躍してくれている。
「指すとやっぱり、引っ張られますよね! ソフトのほうが、疲れないですし。自分……指してても、どうしてもミスが出てしまうので。それで自分の感覚自体がおかしかったんじゃないかと思ってしまいますから。負けると」
──ソフトは攻め将棋なので、対局していると極端な受け将棋になってしまうというお話を他のプロ棋士の先生がしておられたのですが、豊島先生はそうはならなかった?
「あー……そうですね。攻め、というか……ソフトの強いところを学びたいという気持ちを持ってやっていたので。うん。あと……あっ、崩してください(笑)」
──す、すみません……(正座を崩す)。