「全部、その……自分が上手くさせる将棋で、しかも評価値が悪くならないというのは、無理なので」
「だから『評価値はいいけど指しこなしづらい将棋』と『評価値が悪いけど指しこなしやすい将棋』のどちらかを選ぶという選択は、常に迫られているというか」
──その場合、どちらを選ぶことが多いんでしょう?
「私はやはり、評価値を下げないようにしたいという意識がありました。ただ、評価値を下げたとしても、たくさん読ませたら、また上がることもあります。そういう手を発見するのが、すごく楽しい。そういう気持ちで研究をやっていました」
──楽しい。
「ただ最近は、わざと一回下げる手を挟んで、それで自分の知っているところ(局面)へと誘って、それで結果を出すというやりかたも流行っているので。そういうのも取り入れつつっていう感じですけど……」
「そこまでは、あんまりやりたくないなぁ……というのがあったんですけど。そうも言っていられないというか」
「明らかにそれは、何回か使えば使えなくなってしまうので。どこかで使えなくなってしまう研究をするのはちょっと……というのがありましたし」
「あとは、評価値を下げているように見えていても、ちょっと進めたら上がるという手を発見するほうが、なんていうか……なんて言うんでしょう?(笑)」
──ふふふ。
「ふふ。面白い、という感じがありました」
──見つけたときはどんな感じですか?
「自分の思い浮かんだ手をとりあえず入れてみて、それで読み筋を何手か進めてみたら上がる……というのが、たまにあるんです。それが楽しくて研究をやってるというのも、けっこうあったので」
──どれくらいの頻度で見つかったんですか?
「初期の頃はけっこうあったんです。でもやっぱりだんだんそういうのは減ってきましたね」
──一日に何個も見つかったり?
「そんなに見つかることはないですね」
──数日に一つ見つかる感じでしょうか?
「そう……ですね。そういう感じですね」