──宝探しレベルですね……。
「最近だと、新しいソフトに変わると、対策を施されていたりすることもありますね。自分が『お! これは発見したかな?』と思っていた手が、新しいソフトになると、普通にその手を読むようになってしまっていたり(笑)」
──ああ~! それは切ない(笑)。入っていた定跡がマズくて、それに対策を施されちゃった感じなんですか?
「いえ。定跡はオフにして研究しているので」
第76期A級順位戦の羽生戦
──豊島先生が本格的にソフトを使って研究を始めたのは、公平性の点を重視して、(2015年に電王戦FINALに出場した)『Apery』が一般公開されてからだと過去のインタビューで拝見しました。
「はい」
──その後も様々なソフトが公開されてきましたが、豊島先生が『このソフトは研究パートナーとしてよかったな』と思ったソフトがあれば教えてください。
「うーん……基本的には新しいソフトを使って、という感じなんですけど。一番強いとされているソフトを。複数あったら、いろいろ試してみたり」
「でも、技巧が出てきた時は、研究をやりやすくなったなと思いました」
「感覚が、自分に近いというか、合うので。それまでのソフトは、『これ、無理攻めなんじゃないのかな? それとも自分の感覚がおかしいのかな?』って、ずっと疑いながらやっていた感じなので」
「そこのへんがピッタリくる……あんまり違和感なく使えるので」
「あとはそうですね、『そういう感覚が違うところから学んだほうが強くなるのかな?』と思っていた時期があったので」
──強くなったんですか?
「どうだったんでしょうねぇ?(笑)」
──はははは!
「わからないんですけど。けどなんか、羽生さんと私が指したA級順位戦で、私が初めてA級に上がったときの将棋なんですけど……」
来た。
私は思わず前のめりになる。
豊島がこれから語ろうとする将棋については、必ず聞こうと決めていて、入念に準備をしてきた。
それを豊島自身から進んで話してくれるとは……。
この将棋は羽生に勝ってA級でも戦っていける手応えを得たという意味で豊島にとって大きな価値を持つが、他にも、豊島がビックリしたことがある。
それは────