「停滞しているといえば、停滞しているのかもしれませんけど。でも、ソフトは明らかに強いですし、もっと上手く活用できるような可能性は、ありそうな気がするんですけど。強くなるための方法というか。でもそれが、ずっとわからないままやっているというか……」
──ソフトを作っている人たちは、人類の検討に役立てて欲しいという気持ちが強いです。そのために、居飛車振り飛車どんな局面でも満遍なく強いソフトを選び出そうと、自分たちで大会まで開いてるくらいですし。
「ああ。やってましたね。指定局面でたくさん対戦させる」
──いかがです? そういうソフトは、プロの目からして検討に役立ちますか?
「そのへんは難しいというか……振り飛車が強いソフトとか、居飛車の最新形で強いソフトとかあって、水匠とかは居飛車の最新形に特化していると思うんですけど。でもそれでも十分、振り飛車も強いというか(笑)」
──確かに(苦笑)。
「微妙な差で……そこまでは何か、わからないというか。わからない世界ですね。微妙に評価値が違ってくると思うんですけど、それで勉強したとして、どれくらい利いてくるかは、わからないというか……」
──タイトル戦をこなされて、ご自身で課題が見付かって、しばらくはそれに取り組みたいと語っておられました。具体的には、どんな課題に?
「ええと……」
──言いづらいですか?
「言いづらい……ということはないですけど。名人戦と叡王戦があって、まず名人戦では、渡辺さんがわざと評価値が下がる手を選んで」
──ありましたね。第1局で、囲碁のやりかたを参考にしたと。
「それで実際、時間を使う展開になってしまって、私が負けたんですけど。そういうやりかたとかも出てきて。前からあったといえばあったんですけど」
「叡王戦だと、永瀬さんは作戦の幅が広くて、深くも研究しているし、その研究から外れたとしても、やっぱり上手く指してくるというのがあって。そういうのを取り入れたいなというのがありまして」