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──電王戦に出られたときも、そうおっしゃったと聞きました。『普通のことをやっていては結果に結びつかない』と。だからソフトと戦うんだと。

「将棋を覚えて、奨励会に入った頃までは……あんまり9歳とかで奨励会に入った人はいなかったので。自分の才能に自信を持っていたときもありましたけど」

「強い人たちの中でやっているうちに、そういうことは思わなくなっていって」

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「努力……まあ、王将戦に挑戦するくらいまでは、普通のことをやっていたというか。序盤とかをすごく意識するようにしたら、勝てるようになりましたし。自然にやっていけば……と思っていましたし。でもなかなか、難しいのかなって……」

──だとしたら、電王戦で得られたものというのは……コンピューターではなくて、方法を自分で考えて挑戦していくことだったんでしょうか?

「ああー…………ああ……確かに、そうかもしれませんね」

「うん……まあでもそれは人にもよるんでしょうけど(笑)。普通にやって強くなる人もいるんで(笑)」

「あと思うのは、電王戦の頃のソフトは使っていても結構落とし穴があったので。今のソフトは普通にムチャクチャ強いですけど。だから、普通にやって普通に強くなれる人も、いると思います」

 

自分が納得できる将棋を一局でも多く指したい

──最後の質問なんですが、稲葉先生がご結婚なさったり、船江先生が公認会計士の試験に合格なさったり、周囲が人生の岐路に立つような年齢になってきました。そういった変化に、豊島先生は何か思うことは……?

「え? あ……結婚、ですか?(笑)」

──あっ、いえ。その…………我々のような普通の人間ですと、あの……周りが結婚とか、進路を変えたりすると、焦るような部分があるんです。でも豊島先生は、将棋にずっと向き合ってこられて、結果が出なくてもブレずに向き合い続けられた。そこが凄いなと思っていて。

「すごいかどうかはわからないですけどね。失敗してたら酷いので(苦笑)」