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 天皇家は千数百年にわたって連綿と続いてきた。平成から令和へのお代替わりにあたって、過去の無数の先例が参照されたことからもわかる通り、儀礼・行事の体系をはじめとする天皇をめぐる営為は、時空を超えて踏襲され、実践されるものだ。天皇が、わが国の文化的一貫性を体現していることは間違いない。

 一方で、鎌倉幕府の成立以来、天皇を頂点とする公家政権は、権力という点では武家政権に完全に凌駕されていた。天皇はなぜ滅びなかったのか、天皇の力の本質は何なのか、歴史学はそれらの問いに対する明確な答えを見出していない。天皇と天皇制は、明確な検証を経ないまま、今日まで続いてきたといえるだろう。

 今日の日本で、完全なる世襲が行われるのは天皇のみである。生まれた瞬間から天皇になることを運命づけられ、全身全霊でその運命を全うしようと努めてきた事実こそが、無二の存在感を生み出している。天皇の役割の本質は、天皇としての生き方を示すところにあるのかもしれない。本人の希望でも、資質でも、技能でもなく、ただ血統のみによって、このような使命を負わされることの重さは想像を超えている。

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男性を増やすか、女性の流出を止めるか

 現在の皇室が抱えている問題は、天皇の次の世代に男性皇族が一人しかいないこと、女性皇族の結婚により皇族の絶対数が減少の一途をたどることの二点である。解決策としては、男性を増やすか、女性の流出を止めるかしかない。

 前者なら旧皇族に連なる男子を皇室に迎え、後者は女性宮家の設置に向かうことになる。男系男子に固執する論者は前者を推すわけだが、70年以上前に皇室を離れた家柄で、国民に全く馴染みのない男子に皇位継承資格を持たせることにどれほどの説得力があるだろうか。

 後者については、当該の女性皇族に皇位継承資格を与え、その夫や子供を皇族とすれば、あらたな皇族と皇位継承資格者両方を確保することができる。もちろん、この方法は女性天皇や女系天皇(母方のみが皇統に属する天皇)の出現につながるので、男系男子論者や伝統主義者には評判が悪い。女性天皇はともかく、女系天皇は確かに歴史上に前例がない。