北朝鮮の核計画の「首都」ともいうべき寧辺郡における主要施設の温度解析の結果が次の写真だ。一面がほぼ緑一色だが、ところどころ黄色や赤色のスポットが見える。色の違いは温度差を示しており、黄色の地点では緑色の地点より温度が高く、赤色はさらに温度が高いことを示す。
古川博士はこう指摘する。
〈これは深刻な問題を提起していた。
黄色や赤色の地点の中には、「核の心臓部」ともいうべき5メガワット黒鉛減速炉や放射線化学研究所、ウラン濃縮施設が含まれていた。温度解析結果は、これらの施設の内部で活発に活動が再開されていたことを示唆していた。
もし黒鉛減速炉が1年間稼働すれば、約6キロの兵器級プルトニウムを生産しうる。概算で核弾頭の約1~1.5個分相当の分量と思われる。
他方、高濃縮ウランについては、寧辺以外にも製造施設があると考えられているが、実態は不明だ。高濃縮ウラン型核兵器の製造力については専門家の間でも大きく見解が分かれており、専門家によって、年間5個または10~15個程度と予測の幅が広い。
いずれにせよ、北朝鮮は2021年に、核兵器複数個分相当量の兵器級核物質を生産した可能性が高い。今この瞬間も、北朝鮮は核弾頭を静かに増産中と考えるべきだろう〉
ミサイル発射基地の強化と地下要塞化
北朝鮮には核関連施設に加えて、様々なミサイル基地や工場も存在する。これらのミサイル関連施設でもインフラ整備等が大々的に進められてきたことが衛星画像からわかる。
古川博士の分析はこうだ。
〈例えば、平安南道の箴津里(チャムジンニ)にある「テソン機械工場」は、北朝鮮の主要ミサイル工場のひとつだ。その北側にある白楊山には少なくとも6カ所の地下施設への出入口があることが、10年以上前から衛星画像で確認されていた。うち少なくとも2カ所はテソン機械工場の地下施設に通じていると考えられてきた。
2020年以降、同山中の地下施設はさらに重要度を増したようだ。衛星画像で見ると、白楊山の北側では同年初頭以降、山中の道路網が急速に拡充・整備された様子が一目瞭然にわかる。