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「申し訳ないけど、今回は吉原にスパイク賞を獲らせるから」

 あるシーズンに、力をつけた吉原と大林がスパイク賞を争ったことがあった。吉原の2年先輩の大林はすでに実績もあったことから、中田は大林に耳打ちした。

「申し訳ないけど、今回は吉原にスパイク賞を獲らせるから」

 中田がその理由を言う。

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「吉原がもう一皮むけるには、大きな賞を獲って絶対的な自信を持つ必要があった。だから素子に許可を得て、協力してもらう必要があったんです。もちろん吉原には一言も言っていません」

現役時の大林素子氏 ©文藝春秋

 ジャンプ力を誇る福田には、トスでスパイクの入り方をコントロールし、豪快な一撃のお膳立てをした。

「彼女は跳躍力に優れていたので、キャッチが乱れて2段トスになったときは、わざとトスを短くしてやる。そうするとすごい勢いでインナーが打てることが分かっているから、インナーでしか打てないポイントに上げる。そのポイントで打つには、助走の3歩目に勢いを乗せざるを得ないんです。福田だけでなく、それぞれの歩幅に合わせて最後の3歩目に勢いをどう乗せるかを考えながら、トスを上げていました」