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 藤竹はメモの文字をちらりと見て、それを手の中に隠した。

「乾燥大麻を三グラム。大麻リキッドを四本ほしい。全部でいくらですか」

「何言ってんだ、あんた」

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「いいから」藤竹は真顔だった。「合計いくらです? 単価を言いましょうか。乾燥大麻は一グラム七千五百円、リキッドは――」

「九万四千五百円だよ、全部で」もうどうでもよくなって、投げやりに答えた。

「ご名答」藤竹が初めて口もとをほころばせる。「やはり計算能力が高いですね。子どもの頃、そろばんでもやってましたか」

「やってるかよ、そんなもん」

 藤竹はごみバサミを握ったまま、腕組みをした。

「柳田君は、とても興味深い生徒ですよ。数Ⅰの授業で毎回やってもらっているプリントの解答も、注目に値します」

「んなわけねーだろ。いつも半分は白紙だよ」

「連立方程式や二次方程式の解は、難なく求める。かなり複雑な平方根の計算問題なんかも、間違うことはまずない。しかも、途中の計算は一切書かずに、答えだけをぽんと書いている。全部頭の中で計算しているんですか」

「ごちゃごちゃ書くのが面倒なんだよ」

「もっと不思議なのは、問題がいわゆる文章題になると、まったく手をつけないということです。小学生でも解けるような問題にも、答えようとしない」

 それは本当のことだったが、教師に指摘されたのは初めてだった。岳人は小さく息をつき、吐き出すように言った。

「文章を読むのが嫌いなんだよ、昔っから。真面目に教科書なんか読もうとした日にゃ、気が狂いそうになる。吐き気がしてくる。何も頭に入ってこねえ。不良品なんだよ」

「不良品?」

「バカなんだよ。頭がわりいの。おまけに辛抱も足りねえんだと」言っているうちに、感情がたかぶってくる。「でもどうしようもねーんだ。不良品に教科書なんて、豚に真珠なんだよ。中学の教科書なんか、もらったその日にごみ箱にぶち込んでやった」

「それで高校へは進学しなかったわけですか」

「中学にもろくに行ってねーよ」