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「小学1年から受験塾に通わせ、名門中学に…」“高学歴親”が陥りがちな3つの子育てリスク《小児科医が警鐘》

「小学1年から受験塾に通わせ、名門中学に…」“高学歴親”が陥りがちな3つの子育てリスク《小児科医が警鐘》

2024/01/12
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中学受験戦争の過熱で

 最近、東京都をはじめ首都圏で中学受験戦争が過熱したためか、ここ数年でアクシスへの相談も確実に増えています。私は、子育てのリスクは大きく次の3つに分類できると考えています。「干渉」「矛盾」、そして「溺愛」です。

「小学1年生のうちから受験塾に通い、テストではいい成績を取って一番上のクラスに入らないとあの名門中学には受からないから……」

 そんな親御さんも今では珍しくありません。小さなうちから子どもをきちんと塾に通わせようと思えば、お金はもちろんのこと、親御さん自身の時間をかなり割いたサポートが必要になります。バリバリ働いてきた方が仕事を休んだり、時短勤務にしたり、果ては辞めてしまったりと、自分がそれまで積み上げてきたものを犠牲にしたうえで子どもに「干渉」してしまう。そこまでしたのに、いざ蓋を開けてみたらわが子が塾で一番下のクラスに振り分けられたなんてことになれば、当然、ものすごく焦るでしょう。「私がもっとつきっきりで勉強を教えなくちゃ」「クラス分けテストでいい点数を取るために、別の塾に通わせなきゃ」と、さらに「干渉」をエスカレートさせてしまう。

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 結果、第1志望の中学校に入れたとしても、受験の時こそ共通の目標を前に同じ方向を向いていられた親子が、目標を失うことで当時のストレスを改めて自覚したり、第1志望ではない学校に進むことになった場合、心理的な葛藤から子が親に驚くような暴言を吐くようになるなどということもしばしば起こります。

 無事に受験を乗り越えても、今度はお母さんが毎朝子どもを起こし、朝ご飯を食べさせ、身支度させて電車に遅れないように出かけさせるなど、親の過干渉がどんどん進めば、その分、思春期に突入した子どもの反発が増していきます。もはや親子関係が修復不可能な次元にまでいってしまうことさえあります。

親子の様々な「相談」が詰まった一冊

普通に育ってくれれば

 子どもは「矛盾」にも敏感です。

 現在、子育てをしている高学歴親の多くは、自身も厳しい受験戦争を勝ち抜いてきているため、自分の通って来た道がモデルケースになっています。「このレベル以上の学校に行かせなければ」「小さいうちからスポーツや英会話を習わせなければ」という自分の理想に固執している場合もしばしば。それなのに、アクシスに相談に来ると、「普通に育ってくれれば、それでいいんです」と本心を隠して建前を言う親御さんが多い。そういう親御さんほど子どもにこう言います。

「あなたのためを思って言っているのよ」

 良かれと思って言っているのはわかりますが、これは親の理想の押し付けで、いわば呪いをかけているのと同じです。親が、本心では「私達がこれだけ頑張っているのだから、お前も頑張れ!」と苛立っていることに子どもは気づいています。

 このような矛盾した態度に彼らは追い詰められ、ある日、頭痛や吐き気、腹痛など身体の不調を訴える。親御さんたちはそれまで従順だった子に身体症状が出て初めて、「どうしたの、急に!?」と驚くことになるわけです。突然、学校で暴れ出したり、友達に暴力をふるうようになる子もいます。いずれも家庭でのストレスが体調不良や暴力のかたちで表に出てしまうのです。