ひどい偏見の持主だったルーズベルト大統領
第一部にあげたラスブリッジャー&ネイヴの著書(注:『真珠湾の裏切り』)は、「アメリカ人もイギリス人も日本人のことをチビで出っ歯で眼鏡をかけた滑稽な黄色んぼで、世界中で見たものは何でもメモを取ったり写真を撮ったりして、国へ帰って二流の類似品を作ろうとする連中と見下していた」と紹介している。そして軍艦は基本設計が悪いので艦砲射撃をすると転覆するおそれがある、片目を閉じることができないので銃を正確に射撃できない、そんな軍事専門家の説をも引用している。
実をいえば、ルーズベルト大統領その人が、ひどい偏見の持主であったのである。日本のパイロットはすべて近眼で、常に敵に先に発見されてしまう。撃墜は容易である。操縦技量はきわめて拙劣で、とうていアメリカ軍パイロットと互角に戦える力はない、というデマのようなことを信じていたという。
太平洋艦隊司令長官キンメル大将の、無念さまじりの告発も残されている。
「ルーズベルト大統領も、マーシャル参謀総長も、アメリカ人1人は、日本人5人に相当するし、たとえ、奇襲攻撃が行われても、たいした損害をうけることなしに撃退するであろう、といつも語っていた」
アメリカ世論は完全に日本を見下していた
こうした軍当局や指導層の偏見や楽観をそのままに反映して、アメリカの世論の対日蔑視もまた、日本人としては腹立たしいほどひどいものである。
「日本との戦争が起っても、アメリカは容易に勝てる。戦闘は6カ月で終り、そのあと全軍をヨーロッパの戦場に回すことは可能、いや容易なのである」
「アメリカは1カ月1500機の飛行機を生産する。たいして、日本は1年に250機。しかも高オクタンのガソリンが欠乏していて、飛行学校は1年に100名を卒業させているにすぎない」
「アメリカは、空母2隻もあれば日本国内の交通を数カ月途絶させることができる。日本の飛行士はせいぜい速力の遅い爆撃機の操縦ができるくらいで、快速の戦闘機は手に負えない。フィリピンやシベリアの基地から空襲すれば、日本軍は数週間で壊滅される」