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なぜ中東では民主化するとイスラムが力を持つのか

入山 ややこしいですよね。そして、さらにもう1つ、ややこしくしている原因だと私が思っているのが政治体制でして。たとえばイランは1979年のイラン革命が起きるまではパフラヴィー朝ですよね。イラン革命が起きて王は亡命して一見民主主義の体制になったようなんですけど、大統領の上にはイスラム教の最高指導者、ハメネイがいるわけですよね。僕みたいな人間が見ると、ものすごい複雑な仕組みになっていて。酒井啓子さんの『〈中東〉の考え方』を読んで面白かったのは、中東では民主主義になるとイスラムが一気に力を持つというところ。これは、私のような日本にいる人間にはなかなかつかめない感覚なんですが、なるほどなと思いまして。確かにイラクも民主化と同時にイスラム化が強まったり、パレスチナも選挙でハマスが勝ったり。民主化していないときのほうが、イスラムの過激な部分というのは抑えることができて、逆説的なんですけど、民主化するとイスラムが支持されるがゆえに、イスラム色の強い政党がでてきてしまうことが、世の中を混乱させているところがあるのかなと思うんです。

池上 まったくそうですよ。たとえばエジプトは、アラブの春で民主化される前は、ムバラク政権という独裁体制だったわけですよね。そうすると、国際関係においては穏健で、アメリカといろいろと一緒にやっていこうというところだった。ところがアラブの春という民主化運動が起きてムバラク政権が倒れるわけですよね。そして民主的な選挙が行われた結果、ムスリム同胞団というイスラム原理主義勢力が政権を取り、急激にイスラム化が進んだ。それを見た軍部が大慌てでクーデターを起こして、シシ政権をつくり、エジプトのイスラム化がギリギリ止められているということなんですよね。

入山 エジプトもそういう状況なんですね。

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池上 あるいはイラクだって、昔はフセイン大統領の独裁だったわけですから、イスラム教が極めて原理主義的な力を持ってなかったんですよ。それがアメリカのブッシュ(息子のブッシュ)大統領が「イラクを民主化しなければいけない」と言ってフセイン政権を倒して、選挙をやればいいだろうとなった。そのときにシーア派が6割、スンニ派が4割ですから、選挙をすればシーア派が勝つわけですね。こうしてシーア派の政権になったら、極端なイスラムの政権になっていってしまった。今、その後さらに混乱があって、ちょっと変わってはいますけど、本当に民主的な選挙をするとイスラムが勝つ。皮肉なことですけど、これが現実ですよね。