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そもそも「中東」「アラブ」の違いとは何か?

入山 そういったなかで改めてお伺いしたいのは、まずその中東ってなんだ、どこからどこまでが中東かという話がありますね。西はエジプトからなのかもしれないし、東はパキスタンは入るのか、トルコは入るのかとかあると思うんですよね。また、先程から「アラブ」という言葉を普通に使っていますが、「アラブ人」「アラブ民族」はおそらくアラビア語を使う人たちを指すことがメインだと思うんですが、そうすると、ペルシャ語を喋るイラン人とか、トルコ語を喋るトルコ人は入らないわけですよね。そして、さらに宗教の話もある。

 池上さんは、テレビや大学で中東のことを講義されると思うんですけど、めちゃめちゃ複雑でわかりにくいときにどういう説明をされるんですか?

 

池上 これは、地図を使って図解をしながら、要するに「中東」と「イスラム教」と「アラブ」という3つの概念があるけど、みんなイコールではないよ、という形で説明します。中東というのはあくまでイギリスから見た世界戦略のなかでの地域名でしかないわけですよね。だから、中東というのは、あくまで地域名でありますと言います。

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入山 そうなんですよね。自分たちが中東なんて思ってないんですもんね。

池上 だってイギリスは日本のことを勝手に「極東」なんて言ってるわけでしょ。それから、イスラム教というのは、サウジアラビアからどんどん東に広がり、インドネシア、あるいはフィリピンやマレーシアにもイスラム教徒は大勢いるわけですよね。だから「中東」イコール「イスラム教」というわけではないんだ。一方、アラブというのはアラビア語を話す人たちの民族だというので、アラブ民族というのはいる。アラブ民族の多くはイスラム教徒であることは確かだけど、アラブ民族でもエジプトにはキリスト教徒もいるわけだし、あるいはトルコの人たち、あるいはイランのペルシャの人たちはアラブ民族ではなくアラビア語を話していないけど、イスラム教徒だという。こういう3つのカテゴリーが重なっているから、一見ややこしく見えると思うんです。