パンツも小さい時から自分で洗うしかなくて、洗い方もよく知らないし、裏表にして両方穿くから、友達のお母さんに見つかって「そんな汚いパンツ、なんで、穿いてんのー! 穿き替えておいでー」って言われても、新しいパンツなんか、持っていないし……。お風呂は幼稚園ぐらいの時から一人で入っていて、だから、髪の洗い方もよくわからないわけです。右左と、半分ずつ洗っていたような記憶があります。お箸の持ち方を教えてもらったこともないし、歯磨きも教えてもらったことがないから、虫歯がすごい状態でした。

靴も買ってもらえなくて、でも小さくなって痛いから、おばあちゃんに言いました。そしたら、おばあちゃん、靴を買ってきてくれたんだけど、小2の時に24センチの靴を買ってきたんです。もう、ぶかぶかで、ティッシュを詰めても大きくて、それを小学6年まで履かなきゃならないと言われました。大きすぎるから、結局、小さい靴を履いていた。それで、親指のところに穴が開いて……。

「お父さん、お母さん」が何かも知らなかった

そうだ、ある時、友達にこう聞かれました。

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「さおりちゃんって、お父さんとお母さん、おらんの?」

お父さん、お母さんって、何? 私には、よくわかりませんでした。だって最初から、お父さんという人もお母さんという人もいなかったから。深く考えたこともなかったし、だから、おばあちゃんに聞いてみました。7歳ぐらいの時かな。

「おばあちゃん、私のお父さんとお母さんって、どうしたの?」

そしたら、「死んで、もういないよ」って言われて、「ああ、そうなんだ」って思いました。

「お兄ちゃん」という存在も何なのか、よくわかっていませんでした。仲のいい友達の家に男の子がいて、その子を「お兄ちゃん」って呼んでいて、お兄ちゃんという人がいるんだっていうのが、なんだか不思議でした。ところが、いつだったか、おばあちゃんに突然、言われました。

「あの子があなたのお兄ちゃんだから、お兄ちゃんって呼びなさい」