日韓共通の弱みと強み
日韓は、エネルギー安全保障上、最も過酷な条件の下に置かれているわけですが――だからこそ、選択肢は自ずと限られますが、同じ境遇にある日韓の相互協力は互いに利益をもたらす可能性があります。今後、両国が目指すべきは、「再生可能エネルギー」と「水素エネルギー」と「原子力」の活用しかありません。
現在、エネルギー貿易の大部分を占めているのは「石油」と「天然ガス」ですが、技術面とコスト面のハードルをクリアすれば、今後「水素」が存在感を増してくるはずです。というのも、水素エネルギーは「脱炭素化」に寄与するだけでなく、エネルギーを電気の形で短期的にしか貯蔵できないバッテリーに対して、「エネルギーの長期貯蔵」に向いているからです。例えば、水素とトルエンという化合物を融合させると、メチルシクロヘキサンという常温常圧の液体になり、既存の石油貯蔵施設にも備蓄できます。
ただし、再生可能エネルギーと同様に、水素エネルギーを活用するには、技術面とコスト面でまだまだ克服すべき課題があり、これで日本のエネルギー需要をすぐに賄えるわけではありません。その結果、資源価格の高騰と円安のなかで、日本は化石燃料を輸入し続け、経済面でも環境面でもマイナスでしかないことを漫然と続けています。
こうした現状を打破するために真っ先に取り組むべきなのが、次世代原発の活用です。エネルギー安全保障上、似たような境遇にある日韓は、実は「高度な原発技術」という“切り札”をもっている点で共通しています。
世界的に見ても、原発による発電量は増加傾向にあり、IEAによれば、2023年から2050年までの間に倍増する見込みです。中国やインドで原発の新設が急速に進み、ペトロステートである米国も、トランプ大統領自ら新型原子炉の建設を呼びかけている。世界各国が改めて原子力に注目しているのです。
しかし、原発の国内増設と輸出を積極的に進めている韓国に対して、福島第一原発事故を経験した日本では、原子力産業が停滞し、人材の高齢化も進んでいます。このままでは、これまで培ってきた技術や人材が失われかねません。今は、次世代の原子力戦略を立てる“最後のチャンス”なのです。
※本記事の全文(約7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年4月号に掲載されています(田中伸男「エネルギー 日米韓は次世代原発で勝負しろ」)。全文では、以下の内容が語られています。
・次世代小型原発とは
・持続可能な原発の三つの条件
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