いったい何が

 所持金がほとんどなかったエルバンは親戚に電話をかけ、飛行機のチケットを買ってもらい、そのチケットでようやく出身地の黒海に面した港町に着くことができた。しかし、「ルナとアユミに会いたいばかり。何も手につかず抜け殻のような日々をすごした」という。やがて、建設現場で重機を操作する仕事をみつけた。

 日本に残されたルナも夫を奪われ失意のどん底だった。アユミもパパが突然いなくなった異変を感じ、泣いてばかりだ。ルナも自動車部品会社での仕事の一方で、生後9ヵ月のアユミと持病のある母を抱え、目の回るような忙しさだ。家のローン負担も重く、家計的にも追い詰められた。ルナは「この先どうやって暮らしていけばいいのかまったく分からなかった」と語る。

 翌年2022年になると、エルバンは軍隊に徴兵された。徴兵制を敷くトルコでは兵役は20歳以上の男性の義務。16歳から日本で暮らしていたエルバンは兵役を務めねばならなかったのだ。5ヵ月後に除隊したが、妻子に会いたい気持ちは抑えきれない。考え抜いた結果、一つの考えに行きついた。

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「韓国に働きに行く」ことだった。