河原にあがっておやつを食べる。「はいパパ」とポテトチップをエルバンの口にいれると、今度は「はいムシさん」と地面にいるアリたちにもあげた。

「アユミちゃんはやさしいね」。エルバンが言う。

 夕食は韓国フライドチキンの店に行った。

ADVERTISEMENT

「ポヨ、いっぱいね」。チキンを山盛りにした皿を前にしてアユミがうれしそうに言った。「ポヨ」はスペイン語で「トリ」のこと。アユミは保育園では日本語だが、家ではペルー出身のルナの母語、スペイン語で話すことも多いため、スペイン語の単語もよく出てくる。

 夕食後、エルバンのアパートでのこと。ソファでアユミを真ん中にエルバンとルナがくつろいでいる。夫婦が顔を寄せ、キスをしようとすると、アユミが下から手を伸ばしてさえぎった。

「ダメ!」。パパが大好きなアユミ。

「ヤキモチ焼いてるのよ。困った子ね」。ルナが言うと、アユミはキャッキャと笑って大喜びしている。

あっという間にすぎる家族の時間

 3日目は、ソウル市内までドライブし、かばんや衣類などの店が密集する東大門市場へ。アユミは「プリンセスのくつ買う」という。市場の一角に、子ども用の靴店ばかりのエリアがあり、アユミはそこで、おとぎ話のお姫さまの履くような飾りのついた靴を2足買ってもらった。パパとママに両方から手をつないでもらい、お姫様のように満足そうに歩いていく。

 4日目はお花畑のある公園。パパに抱かれてブランコに乗った……。パパとママが2人で写真を撮ろうとすると、アユミはここでもじゃましてくる。

 わたしは予定があったため3人と別れ、翌日、日本に帰った。後で聞いた様子はこんなだったという。

 3人の時間はあっというまに過ぎていった。

 8日目の朝。アユミはもうこの日が日本に帰る日だと分かっている。起こそうとしても布団から出ようとしなかった。布団の中で泣いているのだ。

「パパ来るよ。パパも後から来るよ」。2人はそうなだめすかしてやっとアユミを飛行機に乗せた。飛行機の中でも泣き通しだったという。